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テスラの自動運転機能の現状は?事故の事例も解説

更新日: 2025/11/4投稿日: 2025/7/2

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テスラの自動運転機能の現状は?事故の事例も解説
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「テスラの自動運転って本当に完全自動なの?」
「レベル2とレベル5の違いって何?日本ではどこまで使えるの?」
「テスラのFSD機能は87万円払う価値があるの?」

このような疑問をお持ちではありませんか?

テスラの自動運転機能は、「完全自動運転」というイメージが先行していますが、実際には現状「レベル2」の運転支援システムであり、常にドライバーの監視が必要です

名称と実態のギャップから、過信による重大事故も発生しており、米当局は繰り返し調査を行っています。

本記事では、テスラの自動運転技術の正確な現状、日本での利用制限、価格体系、実際に起きた事故事例、そして実際の体験者の声まで、ITシステムとモビリティの専門家が客観的データをもとに徹底解説します。

テスラの自動車の基本知識を解説

テスラの自動車の基本知識を解説

テスラ(Tesla, Inc.)は、2003年設立のアメリカのEV専業メーカーで、2008年からイーロン・マスク(Elon Musk)がCEOを務めています。

電気自動車のみを製造・販売し、自動運転技術開発でも世界をリードする企業です。

テスラの特徴は、全車種が100%電気自動車である点と、OTA(Over-The-Air)アップデートによりソフトウェアを継続的に進化させる点です。

これは従来の自動車メーカーにはない、ITシステム的なアプローチといえます。購入後も定期的に機能が追加・改善されるため、「買って終わり」ではなく「育てる車」という新しい価値を提供しています。

テスラの主要ラインナップと価格

2025年11月現在、日本で購入可能なテスラ車は以下の4モデルです。

モデル名タイプ新車価格(税込)中古相場(税込)乗車定員
モデル3コンパクトセダン479.0万円~
749.0万円
278.3万円~
478.6万円
5人
モデルSラグジュアリーセダン823.0万円~
1,694.6万円
452.9万円~
1,127.9万円
5人
モデルXSUV(ファルコンウィング)895.0万円~
1,817.09万円
434.0万円~
1,350.0万円
最大7人
モデルYコンパクトSUV553.9万円~
669.6万円
388.1万円~
598.8万円
最大7人

※価格は2025年11月時点の情報です。為替変動や政策により変更される可能性があります。

モデル3およびモデルYは、国や自治体の補助金対象となる場合があり、購入前に最新の補助金情報を確認することで、実質負担額を大幅に削減できる可能性があります。

実際、補助金を活用すれば中古のモデル3が200万円程度で購入できるケースもあり、これは多くのガソリン車SUVよりも安価です。

テスラの自動運転開発の特徴

テスラの自動運転開発には、他社と大きく異なる3つの特徴があります。

  • ビジョンベース(カメラのみ):LiDARや高精度3D地図を使わず、8台のカメラとAIで認識
  • OTAアップデート:車を販売後もソフトウェアを無線で継続的に改善
  • 実走行データ収集:世界中のテスラ車から膨大な運転データを収集しAIを学習

しかし、現在のテスラ車に搭載されているのは「レベル2」の運転支援機能であり、完全自動運転ではありません。この点を正確に理解することが重要です。

【重要】テスラの自動運転機能は現状「レベル2」の運転支援装置

【重要】テスラの自動運転機能は現状「レベル2」の運転支援装置

自動運転レベルとは?レベル0~5の定義

自動運転技術は、国際的にSAE(米国自動車技術者協会)が定義する6段階のレベルで分類されます。

レベル名称システムの役割ドライバーの役割
レベル0運転自動化なし警告のみ全ての運転操作
レベル1運転支援加速・減速または操舵のどちらか常時監視と残りの操作
レベル2部分運転自動化
←テスラはここ
加速・減速操舵の両方常時監視が必須
レベル3条件付運転自動化特定条件下で全操作要請時のみ対応
レベル4高度運転自動化特定条件下で完全自動不要(特定条件内)
レベル5完全運転自動化全条件下で完全自動完全不要

テスラの「オートパイロット」も「FSD(フルセルフドライビング)」も、現状は「レベル2」に分類されています。

つまり、システムが加速・減速・操舵を同時に支援しますが、ドライバーは常に前方を監視し、いつでも運転を引き継げる状態でいる義務があるということです。

名称による誤解:米当局も問題視する「完全自動運転」という表現

テスラの運転支援機能には、その名称をめぐって大きな議論があります。

米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)は、2025年時点でテスラのFSDに関して少なくとも6回目の調査を実施

結果、赤信号無視、逆走、負傷者を出した事故など、数十件の危険な運転事例を取り上げています。

  • 「オートパイロット(Autopilot)」:航空機の自動操縦を想起させる名称
  • 「フルセルフドライビング(Full Self-Driving)」:「完全自動運転」という直訳

これらの名称が「完全な自動運転が可能」という誤解を生み、各国の規制当局から是正を求められています。実際、ドイツやカリフォルニア州では、誤解を招く広告として法的措置が取られた事例もあります。

スタンフォード大学ロースクールのブライアント・ウォーカー・スミス教授は、この状況を「規制のモグラたたき」と表現。

「このプロセスには非常に長い時間を要する。これは、実際のリコールに必要な複数のステップの最初の段階に過ぎず、必ずしも技術的な時間軸と整合していない」

以上のように指摘しており、規制が技術の進化スピードに追いついていない現状が浮き彫りになっています。

また、イーロン・マスクCEOの過去の発言やテスラの公式動画では、「ハンドルから手を離して運転できる」かのような表現が使われ、不適切だと批判されています。

「現実世界のモルモット」?米国の自己認証制度の実態

なぜテスラのような問題のある技術が路上を走行できるのでしょうか?その答えは、米国独特の「自己認証制度」にあります。

NHTSAが具体的な基準を策定し、自動車メーカーは「自社の車両またはシステムがそれらの特定の基準に適合する」と自己認証する仕組みです。

しかし、「特定の技術に特化した基準がなければ、自己認証の対象にはならない」とスミス教授は説明します。

つまり、FSDのような新技術には具体的な基準が存在せず、事実上「走りながら問題を発見する」状態なのです。

スミス教授は厳しい言葉でこう表現しています。

「私たちは皆、理解を超える速度で走行する2トンもの車を導入するという1世紀に及ぶ実験のモルモットのような存在なのだ」

過信による事故の実態

名称による誤解と機能への過信が、実際の事故につながっています。

米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)のデータによると、2021年7月~2024年9月の間に報告されたレベル2搭載車による衝突事故1,770件のうち、80%超の1,492件がテスラ車でした。

ただし、これには特殊事情があります。テスラのシステムは、他社が高速道路に限定するのに対し、市街地を含むあらゆる道路で使用可能としているため、使用機会が圧倒的に多いのです。

事故調査では、以下のような事例が報告されています。

  • オートパイロット使用中にハンドルから手を離していた
  • 前方を見ずにスマートフォンを操作していた
  • 居眠り運転をしていた

システムの技術的限界と、ドライバーの過信が重なることで、重大事故が発生しています。

テスラが目指す完全自動運転の実現可能性

テスラは将来的に「レベル5」の完全自動運転実現を目指していると公言しています。その特徴は、カメラのみを使い、高精度3D地図に頼らない汎用的なシステムを構築する点です。

しかし、この「ビジョンベース」アプローチについては、専門家の間で賛否が分かれています。

見解論拠
楽観的見解人間が目だけで運転できるのだから、AIも同様に可能
コストが低く普及しやすい
地図データに依存しない汎用性
悲観的見解悪天候・逆光などカメラの限界がある
LiDARの方が距離測定精度が高い
レベル5実現には10年以上必要

イーロン・マスクCEOは過去に何度も「完全自動運転の実現時期」を予告していますが、いずれも実現していません。2025年11月時点でも、テスラのシステムは「レベル2」にとどまっています。

テスラの運転支援機能でできること|標準機能「オートパイロット」と「FSD」の違いは?

テスラの運転支援機能でできること|標準機能「オートパイロット」と「FSD」の違いは?

テスラには3段階の運転支援システムが用意されており、それぞれ機能と価格が異なります。購入時に自分の用途に合ったオプションを選択することが重要です。

①ベーシック オートパイロット【標準装備・無料】

全てのテスラ車に標準装備されている基本的な運転支援機能です。追加料金なしで以下の機能が利用できます。

機能名内容
オートステアリング明確な車線内でステアリング操作を支援
(レーンキープアシスト相当)
トラフィックアウェア
クルーズコントロール
前方車両との車間距離を保ちながら
設定速度で巡航
(アダプティブクルーズコントロール相当)

この機能は、主に高速道路での長距離運転時にドライバーの疲労を軽減。ただし、常にハンドルに手を添え、前方を監視する必要があります。

②エンハンスト オートパイロット【オプション・436,000円】

ベーシック オートパイロットの機能に加え、より高度な運転支援機能が追加されます。価格は436,000円(税込)です。

追加機能名詳細内容備考
アクティブ
セーフティ機能
・自動緊急ブレーキ
・正面衝突警告
・ブラインドスポット警告
・車線逸脱防止
事故予防に効果的
オート
レーンチェンジ
高速道路で隣接車線への
車線変更を支援
ドライバーの承認必要
ナビゲート オン
オートパイロット
高速道路の入口から出口まで
自動で走行ルートに沿って運転支援
インターチェンジも対応
ダムサモン狭いスペースから車を
遠隔操作で出し入れ
移動距離12m以内
アクチュアリー
スマートサモン
駐車場内でドライバーの
位置まで自動で迎えに来る
日本では6m以内制限
オートパーキング並列・縦列駐車を
ワンタッチで自動実行
駐車スペース検出も自動

高速道路を頻繁に利用する方、大型ショッピングモールなどでの駐車支援が必要な方にとって、投資価値のあるオプションです。

年間1万km以上高速道路を走行する方であれば、疲労軽減効果だけで十分に元が取れるという声も多く聞かれます。

③フルセルフドライビング(FSD)【オプション・871,000円】日本は機能制限あり

最も高度な運転支援システムですが、日本では2025年11月時点で機能が大幅に制限されています。価格は871,000円(税込)です。

FSD対応国と日本の状況

地域FSD利用状況主な機能
米国・カナダフル機能利用可能市街地での車線変更、信号認識、
無信号交差点通過、一時停止標識対応
中国フル機能利用可能上記と同様
メキシコ
プエルトリコ
フル機能利用可能上記と同様
日本機能大幅制限「フルセルフドライビング ケイパビリティ」
=将来使える権利のみ

日本で現在87万円を支払っても、FSDの高度な機能は使えません。将来的に日本の法規制が変わった際に機能が解放される「権利」を購入する形になります。

米国でのFSD機能(参考)

米国では、FSD V13(2025年時点の最新版)により、以下が可能です。

  • 市街地の交差点での右左折判断
  • 信号機の色認識と自動停止・発進
  • 一時停止標識での自動停止
  • 歩行者・自転車の回避
  • 複雑な駐車場内の自動走行

ただし、これでも「レベル2」であり、ドライバーの監視は必須です。

日本でのFSD導入見込み

2025年9月時点で、横浜・みなとみらい地区でテスラ社員によるテスト走行が実施されています

業界関係者の予測では、国土交通省の認可を経て、半年~1年後に一般ユーザーへOTA配信。ただし、日本導入時も当初は「レベル2(監視付き)」としての提供になると見られています。

FSD購入の判断基準

現時点での日本でのFSD購入は、以下の方に限りおすすめします。

  • 長期保有(7年以上)を前提としている
  • 将来の機能解放を見越して「権利」を確保したい
  • 中古売却時のリセールバリュー向上を期待
  • 最先端技術への投資として割り切れる

一方、以下の方は購入を見送ることを推奨します。

  • 短期(3~5年)での乗り換えを予定
  • すぐに高度な機能を使いたい
  • 87万円の投資に慎重
  • 確実なROI(投資対効果)を求める

米国では月額99ドル(約1.5万円)のサブスクリプションも提供されていますが、日本での導入は未定です。

購入判断に迷う場合は、ITシステムとモビリティの両面から助言できる専門家への無料相談をご活用ください

【体験者の声】米国でFSDを使って感じた「劣等感」とは?

【体験者の声】米国でFSDを使って感じた「劣等感」とは?

ここで、実際に米国でFSD(Full Self-Driving)を体験した日本人ユーザーの生の声をご紹介します。

テスラを3年間所有し、年間2~3万km走行するヘビーユーザーが、カナダのバンクーバーでカーシェアを利用した際に、偶然FSD搭載車に遭遇した体験談です。

「もうエンジン車には戻れない」3年間のテスラ生活

この体験者は、テスラの魅力を以下の4点に集約しています。

  • ガソリンスタンドでの給油が不要(自宅と職場に充電器設置)
  • オートパイロットが楽(クルーズコントロールの進化版)
  • かなり速い
  • 鍵を持たなくてよい(スマホが鍵になる)

特に注目すべきは、「鍵を持たなくてもよい」という一見些細な点が、日常使用では想像以上に大きなメリットだと感じている点です。

ポケットにスマホさえあれば、車に近づくだけでロックが解除され、離れると自動施錠される体験は、一度味わうと戻れなくなるといいます。

興味深いのは、テスラ所有者に感想を聞くと「なぜか批判的な意見を受けることすら多い」という指摘です。

「気にはなるけれど、自分で試そうとは思わない」という方が圧倒的に多く、ネガティブな話の方が喜ばれるという現実があるようです。

偶然の出会い:カーシェアでFSD搭載車に遭遇

カナダのバンクーバーでTuroというカーシェアサービスを利用した際、レンタルしたテスラModel 3にFSDが搭載されていることに運転開始直後に気づいたといいます。

いつも通りオートパイロット機能を使おうとレバーを引いたところ、「勝手に自動運転を始めて正直ビビった」とのことです。

日本のオートパイロットとFSDの決定的な違い

日本で使えるオートパイロット(レベル2)は以下の機能に限定されます。

  • 速度コントロール + 追従機能
  • レーン中央走行維持機能(高速道路でハンドル操作ほぼ不要)
  • 衝突回避機能(車・自転車・人・障害物を把握)

しかし、赤信号や一時停止標識で自動停止・発進したり、目的地を目指して曲がったりはしません。道路や標識は認識して画面に表示されますが、それらの機能は「敢えて使えなくしてある」状態です。

また、ハンドルに手をかけていないとモニターから警告が出ます。一方、米国のFSDは次元が違います。

  • 赤信号での停止と青信号での発進
  • 一時停止標識での停止と発進
  • 右左折の判断と実行
  • 車線変更
  • 自動駐車(駐車スポット選択のみ必要)

ナビに入れた行き先まで、他の車・バイク・自転車・人・障害物を全て把握し、それらの動きに合わせて速度調整しながら、絶妙なタイミングで全ての動作を自動実行します。

出発から目的地まで、ドライバーがやることはほぼありません。

ただし注意が必要なのは、現状では”Full Self-Driving (supervised)”と表示される点です。supervised = 監視下という意味で、あくまで人が乗っていることを前提にしています。

それでも、「はっきり言って運転席でやることは無く、ハンドルに手を乗せていなくてもモニターからは注意されません」という状況だそうです。

初めてのFSD体験:「かなり安心感がある」

初めてFSDを使った印象について、体験者は「かなり安心感がある」と語っています。最初は「どこまで任せてよいものか」と緊張したそうですが、その理由は明確です。

信号だけでなく、以下の情報を全て把握した上で車が制御されていることが見て取れて、とても安心できるといいます。

  • 信号・標識・障害物
  • 人・自転車・バイク・自動車
  • トラック・バス

特に以下の点が印象的だったそうです。

  • 信号や一時停止標識での停止・発進のタイミングや減速・加速感が非常に自然で、ハラハラする必要がない
  • 車線変更時や合流時に、隣車線の後方を走行する車との距離やスピード差を踏まえて、スムーズかつ安全に車間に入り込む
  • 駐車場では、選択した駐車スポットに向けて無駄にハンドルを切り返さず、一発でど真ん中に駐車してくれる

ワクワクを超えた「劣等感」という感覚

初めての完全自動運転に興奮し、子供の前で「大人気なくはしゃいでしまった」という体験者ですが、しばらくしてFSDに慣れてきたところで、ワクワクを超えた少し微妙な感覚を覚えたといいます。

それが「劣等感」でした。

走行中にモニターに映し出される、テスラが認識している信号、標識、車や人や障害物などの情報量が、すでに人間が同時に処理できる情報量を軽く凌駕していることに気づいたのです。

  • 停止・発車、減速・加速の時の挙動が人とは違って毎回自然でブレがない
  • 車線変更時も「一瞬で首を回して後方を目視確認して急いで前方に視線を戻す」なんて動きをする必要がなく、前後の状況を常に把握している
  • 駐車は、人間ができるであろうベストの動きを毎回なんの苦もなく再現してくれる

体験者は、人間(自分)と比べて、テスラのシステムは「視野がとても広くて、情報処理量が圧倒的に多くて、判断が正確で、運転技術も高度である」と実感。

逆に言えば、「自分の視野、認知・判断能力、運転技術が明らかに劣る」ことを痛感させられたといいます。

「否定しようのない劣等感、もしくは、争うまでもない敗北感」。そして、「オレ、運転しない方がいいじゃん」という結論に至ったそうです。

もともと運転が好きで、瞬時の判断能力も悪くないと自負していた体験者が、「どう考えても、どうあがいても、完全敗北。人が考えうるベストにどんどん近づけているので、人が勝てるわけがない」と語っています。

それでもまだ完璧ではない:FSDの問題点

ただし、完全自動運転とはいえ監視下であることが原則であり、まだまだ完璧ではありません。数日の運転だけでも、以下のような問題点が見られたといいます。

  • 対向車線側(左側)にある目的地に到着して左折しようとしたが、道路からの入り口がないため侵入できず、対向車線で止まってしまった
  • 路肩駐車列で車線の幅が狭まっている際に、車列ギリギリを走行してしまい、急に車のドアが開いたり人が飛び出すことを想定できていない

しかし体験者は、「これらはマイナーなプログラム修正ですぐに対策できそうなものばかりで、走行車ごとのデータ収集と解析ができていれば、より一層安全性は高まっていくはず」と前向きに評価しています。

この体験談から分かることは、米国のFSDは確かに驚異的なレベルに達しているものの、それでも「レベル2」であり、完全ではないということです

日本導入を待ち望む声が多い一方で、過信は禁物という教訓でもあります。

テスラ社が展開する「ロボタクシー」とは?

テスラ社が展開する「ロボタクシー」とは?

「Cybercab(サイバーキャブ)」の概要

テスラが2024年10月に発表した「ロボタクシー(Robotaxi)」は、ハンドルもペダルも無い2人乗りの完全自動運転車両です。正式名称は「Cybercab(サイバーキャブ)」といいます。

項目内容
車両名Cybercab(サイバーキャブ)
乗車定員2名
操作装置ハンドル・ペダル無し(完全自動運転専用)
想定価格30,000ドル未満(約450万円以下)
生産開始予定2026年(イーロン・マスク発表)
サービス開始米国テキサス州オースティンから順次展開予定

テスラが公開したプロモーション動画では、乗客が車内の大型ディスプレイで映画を楽しみながら無人走行する様子が紹介されています。

実現に向けた課題と不透明な点

しかし、2025年11月時点で、ロボタクシーの実用化には多くの不明点と課題があります。特に、現在のFSDが「レベル2」であるのに対し、無人走行には「レベル4」以上が必要という技術的飛躍が求められます。

不明な点は以下のとおりです。

  • 具体的な運行エリア(ODD: 運行設計領域)
  • 遠隔監視・介入の体制
  • 利用者の呼び出し・決済方法
  • 事故時の責任体系
  • 各州・各国での認可状況

技術的課題はいかのとおりです。

  • 現在のFSDは「レベル2」であり、無人運転(レベル4以上)には技術的飛躍が必要
  • カリフォルニア州DMVの無人走行許可(Driverless)をテスラは未取得
  • Waymo(レベル4実用化済み)と比較すると実績に大きな差

専門家の間では、初期段階では限定的なエリア(低速・単純な道路)での運用になるとの見方が有力です。

消費者の反応:慎重な姿勢が優勢

2024年の米国での世論調査によると、ロボタクシーに対する消費者の印象は厳しいものがあります。

調査項目回答割合
「ロボタクシーに乗りたくない」71%
「ロボタクシーを違法にすべき」43%

この慎重な姿勢の背景には、次章で解説するテスラ車の事故事例が影響していると考えられます。

【実例分析】テスラの運転支援機能動作中に起きた事故の事例5選

【実例分析】テスラの運転支援機能動作中に起きた事故の事例5選

テスラの運転支援システムは高度ですが、過信により重大事故も発生しています。2025年3月時点で、オートパイロットおよびFSDは世界で52件の致命的事故に関与しているのです

ここでは、システムの限界とドライバーの過信が招いた代表的な事故事例を5つ紹介します。

事例①【2016年・米国】世界初のオートパイロット死亡事故:トレーラー衝突

発生日時2016年5月7日
場所米国フロリダ州ウィリストン
機能状態オートパイロット動作中
被害テスラ車ドライバー死亡

事故の経緯:オートパイロット動作中のテスラ「モデルS」が、前方を左折横断してきた大型トレーラーに減速せず衝突し、ドライバーが死亡

技術的原因:

  • 強い日差しとトレーラーの白色により、カメラがトレーラーを「空」と誤認識
  • レーダーもトレーラーの高い位置(地上約4m)を標識と誤判断

ドライバー側の問題:

  • 37分間の走行中、ハンドルに手を添えていたのは合計25秒のみ
  • システムから「ハンドルを握れ」と7回警告されていたが無視
  • 車内でDVDを視聴していた形跡

システムの認識限界と、ドライバーの完全な過信が重なった典型的な事故例です。

この事故は世界中に衝撃を与え、「オートパイロット」という名称の問題性が初めて大きく取り上げられるきっかけとなりました。

事例②【2018年・米国】高速道路で中央分離帯に衝突:ゲームプレイ中の事故

発生日時2018年3月23日
場所米国カリフォルニア州マウンテンビュー
(シリコンバレー)
機能状態オートパイロット動作中
被害テスラ車ドライバー死亡

事故の経緯:オートパイロット使用中のテスラ「モデルX」が、US-101号線でコンクリート製中央分離帯に時速112kmで衝突。バッテリーから出火し、ドライバーが死亡

技術的原因:

  • 道路の分岐点で車線マーキングが不明瞭だった
  • システムが正しい車線を認識できず、中央分離帯方向へ誘導

ドライバー側の問題:

  • 事故6秒前にシステムが「ハンドル操作なし」を検知
  • スマートフォンでゲームをプレイしており、前方不注視
  • 過去にも同じ場所でシステムの挙動異常を経験していたが対策せず

この事故は、道路インフラ(車線マーキング)の状態がシステム性能に直結することを示しています。

テスラのカメラベースシステムは、明確な車線マーキングに依存しているため、日本の古い道路や地方道路では性能が低下する可能性があります。

事例③【2018年・日本】東名高速での死亡事故:居眠り運転

発生日時2018年4月5日
場所神奈川県綾瀬市 東名高速道路下り線
機能状態クルーズコントロール動作中
被害二輪車ライダー死亡

事故の経緯:先行して発生していた別の事故の救護活動中、クルーズコントロール使用中のテスラ車が路上の二輪車ライダーをはねて死亡

技術的原因:

  • 前方車両が車線変更により視界が開けた瞬間、システムが加速
  • 路上に立っていたライダー(静止物体)を検知できず

ドライバー側の問題:

  • 居眠り運転をしていた(ドライバー本人が供述)
  • 前方の異常(事故処理中)を認識せず

この事故は日本国内で発生した最初のテスラ運転支援機能関連死亡事故として、大きく報道されました。日本でも同様の事故が起こりうることを示した重要な事例です。

事例④【2023年・米国】FSD初の歩行者死亡事故:夕日による視界不良

発生日時2023年11月
場所米国アリゾナ州 州間高速道路
機能状態FSD(Full Self-Driving)動作中
被害歩行者死亡

事故の経緯:先に発生していた衝突事故の交通整理のため路上にいた人物を、FSD動作中のテスラ車が時速105kmから全く減速せずに衝突。被害者は死亡

技術的原因:

  • 強い夕日(逆光)により、カメラが歩行者を検知できず
  • テスラのビジョンベース(カメラのみ)システムの限界が露呈

この事故は、カメラ主体のシステムが悪条件(逆光・悪天候)に弱いという懸念を裏付ける結果となり、LiDAR搭載の必要性を主張する専門家の声が高まりました。

これはテスラの技術思想の根幹に関わる問題であり、今後の開発方針を左右する可能性があります。

事例⑤【2024年・米国】FSD動作中の二輪車衝突:携帯電話操作中

発生日時2024年4月
場所米国ワシントン州
機能状態FSD動作中
被害二輪車ライダー死亡

事故の経緯:FSD動作中のテスラ車が走行中の二輪車に衝突し、ライダーは死亡

ドライバー側の問題:

  • FSD動作中に携帯電話を操作していた(本人が警察に供述)
  • 前方不注視の状態

衝突の直接的技術原因は報道されていませんが、「FSD=完全自動運転」と誤解し、監視義務を怠った典型例です。名称による誤解が、致命的な事故を引き起こす最新の事例となりました。

事故分析から見える共通点

これら5つの事故事例から、以下の共通する問題点が浮かび上がります。

問題の種類具体的内容
システムの
技術的限界
・悪条件(逆光・雨・雪)での認識精度低下
・車線マーキング不明瞭時の誤判断
・静止物体(歩行者・障害物)の検知失敗
・白色物体の誤認識(空と誤判断)
ドライバーの
過信・不注意
・ハンドルから手を離す
・前方不注視(スマホ・ゲーム・DVD)
・居眠り運転
・警告無視
名称による
誤解
・「オートパイロット」「FSD」という名称から
完全自動運転と誤認
・レベル2であることの理解不足

技術の限界と人間の過信が組み合わさることで、重大事故が発生しています。

【結論】テスラの自動運転は現状レベル2のため過信は厳禁!専門家への相談も検討を

【結論】テスラの自動運転は現状レベル2のため過信は厳禁!専門家への相談も検討を

テスラの「オートパイロット」も「FSD(フルセルフドライビング)」も、その名称に関わらず、現状は「レベル2=部分運転自動化」の運転支援システムです

これは、システムが運転を代替するのではなく、あくまでドライバーを「支援」する機能であることを意味します。

注意点は多いものの、テスラの運転支援システムには確かな価値があります。

テスラ2023 Impact Reportによると、FSD使用時の事故率は100万マイルあたり0.21件で、米国平均(1.49件)の約7分の1です。正しく使用すれば、安全性を大幅に向上させることが可能です。

テスラの運転支援機能は、長距離運転時の疲労軽減、渋滞時のストレス削減に大きく貢献します。実際のユーザーからは「もうエンジン車には戻れない」という声も多く聞かれます。

ただし、それは「過信せず、正しく理解して使用する」ことが大前提です。

今後も当メディアでは、自動運転技術、EV市場の最新動向、法規制の変化、各社の技術比較など、モビリティに関する正確で実用的な情報を発信していきます。

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