日本で自動運転が普及しない理由は?5つの要因と今後の展望を紹介
更新日: 2025/9/4投稿日: 2025/8/31
EV
「自動運転車っていつになったら実用化されるの?」
「海外では自動運転車が走っているのに、なぜ日本では普及しないの?」
自動運転技術への期待が高まる中、日本での普及が遅れていることに疑問を感じている方もいるのではないでしょうか?結論として、日本で自動運転が普及しない理由は、技術開発の遅れ、法整備の不備、社会の不安、天候対応の困難さ、雇用への影響といった複合的な要因があります。
この記事では、以下の内容について詳しく解説します。
- 日本の自動運転普及が遅れている5つの具体的な理由
- 自動運転技術の現状と海外との比較
- 普及に向けて必要な今後の取り組み
この記事を読むことで、自動運転の現状と課題が明確になり、将来の購入判断に役立つ正確な情報が得られます。ぜひ最後までご覧ください。
日本の自動運転の普及状況について解説

日本は自動運転の開発を積極的に進めており、官民一体となって研究開発が継続されています。国土交通省では「自家用車」と「移動サービス」の2つの分野において、2030年までにレベル4自動運転車の実用化を目指す具体的な数値目標を設定して取り組んでいる状況です。
自家用車 | 移動サービス | |
---|---|---|
目標 | 2025年目途に、高速道路においてレベル4の実現 | 限定地域における無人自動運転移動サービスを実現 ・2025年目途 50か所程度 ・2027年目途 100か所以上 |
実績 | レベル3自動運転車(高速道路・渋滞時)であるホンダ・レジェンドを販売 ※世界初 | 全国各地で様々な実証事業 レベル3での無人自動運転移動サービスを事業化 |
2021年3月に発売されたホンダの「レジェンド」は、世界の市販車で初めて自動運転レベル3を実現しました。
2021年モデルのレジェンドに搭載された「トラフィックジャムパイロット」は、渋滞中の高速道路でドライバーに代わってアクセル、ブレーキ、ステアリング操作を行います。
なお、トラフィックジャムパイロットを搭載したレジェンドの生産数は100台に限定されており、既に販売されていません。
日本は世界初のレベル3自家用車を発売したものの、2025年現在では、米国や中国に比べると、普及の面で遅れをとっているのが実情です。米国ではウェイモがレベル4の完全無人運転車による商用サービスを開始しており、中国でもBaiduのApollo Goがタクシーサービスを展開しています。一方、日本はごく限られた地域での実証実験段階にとどまっているのが現状です。
なぜ日本では自動運転が普及しないのか、次の章で理由を解説します。
日本で自動運転が普及しない5つの理由

日本で自動運転が普及しない理由には、技術面、法制面、社会面など多角的な要因があります。以下、5つの主要な理由について詳しく見ていきましょう。
- 高度な自動運転技術の開発が進んでいない
- 法整備が追いついていない
- 世間が自動運転に懐疑的
- 天候への対応が難しい
- 雇用への影響がある
1.高度な自動運転技術の開発が進んでいない
自動運転には認知、判断、操作という3つの要素を統合した高度な技術が必要となります。完全に人間のアシストが不要なレベルの自動運転の実現は、技術的にまだまだ先の話です。
自動運転のレベルは0から5までの6段階に分類されており、現在日本で市販が実現したのはレベル3までです。レベル3では、システムが運転の主体となるものの、緊急時には人間が運転を引き継ぐ必要があります。
完全にシステムが運転を実行するレベル4以の実現には、膨大な技術的課題が残されています。
レベル | 内容 |
---|---|
0 | 完全な人力での運転 |
1 | システムが縦方向(加速・減速) もしくは横方向(ハンドル操作)のいずれか一方を制御する「運転支援」 |
2 | システムが縦方向と横方向の両方を、限定された状況で実行する「部分運転自動化」 |
3 | システムが特定の条件下ですべての運転を実行し、運転手が運転以外のことをできる「条件付き運転自動化」 |
4 | システムが特定の条件下ですべての運転を実行し、運転手不在でも動作可能な「高度運転自動化」 |
5 | あらゆる条件下でシステムが自動運転する「完全運転自動化」 |
ただし世界的に見ても、レベル4以上の自家用車の一般販売は実現していません。そのため、日本だけが技術開発で大幅に遅れているわけではないのが実情です。
自動運転のレベルについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご確認ください。
2.法整備が追いついていない
日本の道路交通法は、人間が運転することを前提として作られており、完全自動運転を想定した法的枠組みが十分に整備されていません。
例えば自動車運転処罰法の第5条には「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。」という、人間の運転手の存在が前提の記載になっています。また「自動車の運転上必要な注意」の定義は具体的ではなく、法律の条文とAIの判断基準とを、どのように整合させるのかも課題です。(参考:e-GOV法令検索)
今後自動運転を本格普及させるには、特に以下の課題を解消しなくてはなりません。
- 事故時の責任の所在(ドライバーか自動車メーカーか)
- システム誤作動時の対処法
- データ収集と個人情報保護のバランス
- 保険制度の見直し
例えば自動運転車が交通事故を起こした場合、責任が「ドライバー」にあるのか「自動車メーカー」にあるのかという問題は、現在の法律では明確に定められていません。システムの誤作動が起きた場合の対処法についても、考慮すべきポイントは多岐にわたります。
3.世間が自動運転に懐疑的
自動運転技術の実現を期待する声がある一方で、実際に利用することに不安を覚える人も多いのが現状です。自動運転車が実現しても、「乗るのが怖い」と感じる人が多ければ、普及は進みません。
実際に内閣府が発表した「道路交通安全に関する基本政策等に係る調査報告書」によると、令和7年3月の段階で、自動運転車の利用意向がある人の割合は、61.6%~62.4%という結果でした。約4割の人が、自動運転を使わない意向であることがわかります。
自動運転が実用化した場合に不安に感じることは、以下の通りです。
自動運転車が実用化した場合に不安に感じること
- 自動運転システム等のエラーや誤作動:66.6%
- 自動運転車事故時の刑事責任の所在:40.9%
- 自動運転車と非自動運転車の混在:40.7%
- 自動運転車事故時の民事責任の所在:37.8%
- 運転者の運転技量の低下:32.2%
このような社会的な不安が払拭されない限り、技術が完成しても普及には時間がかかると予想されます。
4.天候への対応が難しい
日本は四季がはっきりしており、天候が変化しやすい国です。台風、豪雨、濃霧、雪といったさまざまな気象条件に対応する必要があります。
例えば濃霧で視界が悪化した状況では、カメラやセンサーの性能が低下し、システムが誤作動を起こして事故につながるリスクが高まります。他にも、豪雨時の路面状況の変化や、雪道でのスリップ対応など、日本特有の気象条件に対応した高精度な技術が求められます。
海外では比較的気候が安定している地域で自動運転の実証実験が行われているケースが多く、日本のような多様な気象条件での運用は、世界的にも技術的な挑戦となっています。
5.雇用への影響がある
自動運転が本格普及すると、ドライバー職が大幅に削減され、失業者が増加する恐れがあります。特に以下の職種への影響が懸念されています。
- タクシー運転手
- トラック運転手
- バス運転手
- 配送ドライバー
例えば、トラック運送事業に関わる人は約201万人いるとされており(参考:日本のトラック輸送産業 現状と課題2024)、自動運転の普及は大きな社会問題となる可能性があります。新たな雇用の創出や職業訓練の提供が無いと、労働組合や関係者からの反発意見も多くなると考えられます。
自動運転の普及に向けて必要な今後の取り組み

自動運転の普及を実現するには、技術面、法制面、社会面での総合的な取り組みが必要です。以下、3つの主要な取り組みについて解説します。
AI技術を取り入れた自動運転技術の向上
昨今はAI技術が急激に進歩しているため、この技術を自動運転にも積極的に取り入れる必要があります。特に機械学習とディープラーニングの活用により、従来よりも高精度な判断能力の実現が期待されています。
具体的には、膨大な運転データを学習させることで、人間が判断するよりも効率的で正確な運転制御が可能になる可能性があります。天候の変化や予期しない状況に対する適応能力も、AI技術の発達により向上が見込めるでしょう。
また、5G通信技術との組み合わせにより、リアルタイムでの情報処理能力も飛躍的に向上すると予想されます。
自動運転車の技術は、人の命に関わる重大な要素です。最新技術を活用していくことが求められます。
法整備
日本では2023年4月から、レベル4の自動運転車が条件付きで認められるようになりました。しかし、現在はバスやタクシー、物流業界に限定された運用にとどまっています。
今後の本格普及に向けては、一般ユーザーが自動運転車を購入・利用できる法制度の整備が求められます。特に重要な法整備項目は以下の通りです。
- 事故時の責任配分の明確化
- 保険制度の見直し
- データ収集・活用に関するルール
特に事故の責任の所在については、綿密な制度設計を進める必要があります。
また、自動運転が本格的に普及した社会では、様々な国で開発されたシステムを搭載した自動運転車が、国境を越えて走行することになるので、国際的なルールの制定も不可欠です。
セキュリティの向上
高度な技術を用いる自動運転車は、インターネットへの常時接続が不可欠です。便利になる一方で、ハッキングなどのサイバー攻撃が実行される危険性も指摘されています。
日本では2022年7月から、自動運転車サイバーセキュリティ対策に関する法規則の適用が開始されました。現在、以下の対策が進められています。
- 暗号化技術の強化
- 侵入検知システムの導入
- 定期的なセキュリティアップデート
- 国際的なセキュリティ基準への対応
特許を取得した世界トップレベルのセキュリティ技術により、自動車へのサイバー攻撃を防ぐ取り組みが官民連携で推進されています。
自動運転の普及を進めるためにはさまざまな課題解決が必要
日本で自動運転の普及を進めるには、現状の課題に対して総合的なアプローチが必要です。
AI技術の活用による技術向上、包括的な法制度の整備、セキュリティ対策の強化を同時に進めることで、自動運転の実用化が加速すると期待されます。
海外との競争もありますが、日本独自の課題に対応した技術開発と制度整備により、安全で信頼性の高い自動運転システムの実現が可能になるでしょう。今後の技術革新と社会的な理解の促進により、自動運転車の普及が現実のものとなる日は確実に近づいています。
今後も当メディアでは、自動運転やEVなどのモビリティなどに関するニュースをまとめて発信していきます。最新情報が気になる場合は、ぜひ定期的にチェックしてみてください。
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