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EV(電気自動車)のバッテリーとは?種類・寿命やメーカー別シェアランキングまでを網羅的に解説

更新日: 2025/12/3投稿日: 2025/11/29

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EV(電気自動車)のバッテリーとは?種類・寿命やメーカー別シェアランキングまでを網羅的に解説

「EVに興味はあるけれど、バッテリーの寿命が心配……」
「バッテリー交換って、すごく高いって聞くけど本当?」

EVの心臓部であるバッテリーは、ガソリン車のエンジンと性質がまったく異なりますしっかり価格や寿命、扱い方を把握すれば、ガソリン車より便利に使える可能性があるのです。

そこでこの記事では、EVバッテリーの基礎知識から寿命についての詳しい知識などを徹底解説します。

この記事を読めば、EVを効率よく使うためのバッテリーの知識が身につきます。ぜひ最後までご覧ください。

【基礎知識】EVには2種類のバッテリーが搭載されている

EVには、大きく分けて以下2つのバッテリーが搭載されています。

  1. 駆動用バッテリー
  2. 補機用バッテリー

1. 駆動用バッテリー

EVの動力源となる、大きな容量を持つバッテリーです。車両下部に配置されることが多く、これにより車両の重心を低くし、安定性を高める役割も持っています

2025年現在、ほとんどのEVでは「リチウムイオン電池」が採用されています。リチウムイオン電池が採用される理由は、以下の3つです。

  • 高いエネルギー密度を持つ:小型軽量でも大容量を実現
  • 自然放電が少ない:1ヶ月あたり約1~3%
  • メモリー効果が少ない:充電を繰り返しても最大容量が減りにくい

駆動用バッテリーは、数百ボルトの高電圧を扱うため大変危険です。そのため「BMS(バッテリーマネジメントシステム)」という厳重な管理システムによって、常に温度や充放電の状態が監視されています。

2. 補機用バッテリー

駆動用とは別に搭載されている、小型の12Vバッテリーです。補機用バッテリーはガソリン車にも搭載されており、以下の部品に電力を供給します。

  • ヘッドライト
  • ウインカー
  • ワイパー
  • カーナビ
  • オーディオ
  • パワーウィンドウ
  • メーター類

補機用バッテリーに使われている電池は?

EV開発の初期段階では、補機用に使われる電池は、ガソリン車と同様「鉛蓄電池」が主流でした。近年は軽量化や長寿命化のため、補機用にも「リチウムイオン電池」を採用する車種が増えています。

EVを起動すると、まずこの補機用バッテリーから全体に電力が供給されます。その後、回路をつなぐスイッチが作動し、メインの駆動用バッテリーが起動する仕組みです。

もし補機用バッテリーが上がってしまうと、EVを起動できないので注意しましょう。

EVバッテリーの価格は?

EVの駆動用バッテリーは、非常に高価な部品です。ここからは、具体的な金額について解説します。

価格は車体全体の約3~4割

駆動用バッテリーの価格は「車両価格全体の約30%〜40%」を占めると言われています。そのため、車両価格が500万円のEVであれば、単純計算でバッテリーだけで150万円〜200万円のコストがかかります。

高価格の理由は、バッテリーにリチウムなどのレアメタルが多く使われているためです。よって、駆動用バッテリーの価格は、レアメタルの市場価格に大きく依存します。

各国政府や自動車メーカー各社は、この問題を解決するために、サプライチェーンの強化や次世代電池の開発を急いでいます。もしレアメタルを使わない全固体電池などのバッテリー開発が進めば、EV全体の価格は大きく低下する可能性が高いです。

交換には高額な費用がかかる

駆動用バッテリーは消耗品のため、いずれは劣化して交換が必要になります。ですが、その交換費用は非常に高額です。

駆動用バッテリーの交換費用目安(2025年現在)

  • 日産リーフ(40kWhモデル):
    • 新品交換:約90万円〜100万円
    • リビルト品(再生品):約40万円〜50万円
  • テスラ(モデル3など):
    • 新品交換:約100万円〜250万円以上(推定)

高額になる理由はバッテリー本体の価格に加え、専門的な知識と設備が必要なためです。なので実際には、保証期間が切れた後に全額実費で交換するオーナーは少ない傾向にあります。

EVバッテリーの寿命はどれぐらい?

「寿命」といっても、ある日突然使えなくなるわけではありません。ここからは寿命の定義と目安について解説します。

バッテリーの状態は「SOC」と「SOH」で表される

バッテリーの状態を知るには、「SOC」と「SOH」という2つの指標を理解する必要があります。

  • SOC (State of Charge):スマホと同じく「あとどれくらい電気が残っているか」の割合
  • SOH (State of Health):新品時を100%として「最大でどれくらいの電力を蓄えられるか」を示す割合

EVバッテリーの寿命を測るうえで重要なのはSOHです。SOHが下がると、いくら充電しても少ない電力しか蓄えられません。

例えば、カタログスペックが400kmのEVでも、SOHが80%になれば、満充電しても320km程度しか走れなくなります。

もし中古EVを買う際は、この「SOH」を見て車の状態を判断する必要があります。

基本的な寿命は「8年または16万km」

一般的に、SOHが70%〜80%程度まで低下した状態を「寿命」と呼びます。ここで一つの目安となるのが、多くのメーカーが設定している保証期間「8年または16万km」です。

これは「8年または16万km走行する前にSOHが規定値を下回ったら無償交換する」という基準です。EV業界では、このラインが寿命の目安として広く認識されています。

ただし、これはあくまで保証期間であり、実際の寿命ではありません。乗り方や充電方法、使用環境によって、より長く利用できるケースは多くあります

多くのメーカーは手厚い保証を設けている

EV最大の懸念点であるバッテリー寿命の不安を解消するため、各メーカーは手厚い保証を用意しています。具体例として、国産メーカー大手3社の保証内容をまとめました。

メーカー保証期間・距離保証内容
日産8年または16万km容量がセグメント9未満(SOH約70%相当)で無償修理・交換
三菱8年以内かつ16万km以内容量が66%を下回った場合に無償修理・交換
トヨタ10年または20万km容量が70%を下回った場合に無償修理・交換

メーカー間で保証期間や距離に差はありますが、基本的には「SOH 70%」を保証ラインにするのが標準となっています。

EVバッテリーの寿命を縮める要因は?

ここからはSOCとSOHの2つの観点から、EVバッテリーの寿命を縮める要因について解説します。

SOC(航続距離)を低下させる2つの要因

SOCを低下させる要因は、以下の2つです。

  1. 極端な外気温
  2. 荒い運転

1. 極端な外気温

外気温が極端に高い、あるいは低いと電力効率が悪くなり、電費が悪化します。

バッテリーは、中の電解液を化学反応させて電気を取り出します。しかし冬場は寒さで化学反応が鈍く、うまく電気を取り出せません

この電力効率の悪化は、航続距離を縮める大きな要因です。また、暖房は電力消費が激しいため、さらに電力を大きく消費します。

一方、夏場では、バッテリーの発熱が問題となります。バッテリーの発熱は寿命を縮める原因となり、自動で冷却システムが起動するためです。

この冷却システムの利用に、余計な電力を消費してしまう点には注意しましょう。

2. 荒い運転

EVの電費はガソリン車の燃費と同様、運転スタイルに大きく左右されます。

EVモーターは高い出力のため、自由度の高い運転が可能です。しかし、急発進や急加速、急ブレーキを繰り返すと、電力を大きく消費します。

また、高速道路上では、空気抵抗が大きい点も問題です。空気抵抗が大きいと加速に馬力が必要なため、余計に電力を消費します。

SOH(寿命)を低下させる3つの要因

SOHを低下させる主な要因は、以下の3つです。

  1. 極端な外気温
  2. 頻繁な過放電や満充電
  3. 急速充電の多用

1. 極端な外気温

リチウムイオン電池は、熱に弱い性質があります。そのため、炎天下での放置や高温状態での連続走行は、劣化を早める最大の要因です。

逆に、氷点下などでの急速充電も、内部ショートの原因となり得るため危険です。現在のEVには保護機能があるのであまり問題にはなりませんが、念のため注意しましょう。

2. 頻繁な過放電や満充電

リチウムイオン電池は、極端な充電状態(0%または100%)に長時間置かれると、劣化が進みやすくなります。とくに、満充電状態での放置は、バッテリーへの負荷が非常に高くなります。

そのため日常使いにおいては、充電率を80~90%で止めておくのがおすすめです。近年のEVにはバッテリー保護機能として、充電率を80%程度に留める機能があるため、有効活用しましょう。

3. 急速充電の多用

急速充電は、バッテリーに短時間で多くの電力を蓄えます。そのためバッテリーが高温になりやすく、大きな負荷を与えます。

バッテリーは高温に弱いため、長持ちさせたければ急速充電のみを使うのは控えましょう基本は自宅などの普通充電を用い、長距離移動のつなぎとして急速充電を利用するのがおすすめです。

ただし、急速充電の多用が即座に大幅な劣化につながるわけではありません。気にしすぎるあまり、利便性を損なわないようにしましょう。

【2025年11月】EVバッテリーのメーカー別シェアランキングTOP10

EV市場の拡大に伴い、バッテリーメーカーの勢力図は常に変化しています。2025年10月の世界市場データをもとに、主要メーカーのシェアランキングをまとめました。

順位メーカー名特徴
1位CATL中国・シェア36.6%を誇る
・テスラやメルセデスなど世界中のメーカーに供給
2位BYD中国・自社製EVも製造
・「ブレードバッテリー(LFP)」の安全性と低コストが強み
3位LG Energy Solution韓国GMやホンダなど、主要メーカーとの合弁工場を多数展開
4位CALB中国・中国国内で急速に成長している中堅メーカー
・広州汽車などに供給
5位SK on韓国・フォードやヒョンデ、フェラーリなどに供給
・パウチ型バッテリーが特徴
6位Panasonic日本・テスラ向けの主要サプライヤー
・TOP10では唯一の日本企業
7位Gotion中国・フォルクスワーゲンが出資
・安価なLFPバッテリー技術に定評あり
8位Samsung SDI韓国・全固体電池の開発にも積極的
・BMWやステランティスなどに供給
9位EVE中国・円筒形バッテリーなどでBMWと提携
・多様な電池形式を手掛ける
10位SVOLT中国・長城汽車から独立。コバルトフリー電池など独自技術を開発
引用:SNE Research

上位は中国勢が圧倒しており、CATLとBYDだけで市場の過半数を占める勢いです。日本企業ではパナソニックがテスラとの提携で健闘していますが、全体としては中韓メーカーが市場を牽引している状況となります。

ここから日本企業が巻き返すには、全固体電池などの次世代電池の技術革新が要となります。

【まとめ】EVのバッテリーは日進月歩で進化し続けている

EVバッテリーの技術は、現在発展途上です。各メーカーがしのぎを削り合い、日進月歩で進化し続けています。

「バッテリーは消耗品」という事実は変わりません。ですが、近年の技術進化により、その寿命や性能は飛躍的に向上しています。

EVは正しい知識を持って扱えばランニングコストも安く、エコな乗り物として大活躍してくれます。もしEVをお探しの方は、バッテリーの性能も確認し、最適な1台を選んでみてください。

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