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水素自動車とは?仕組みやメリット・デメリットを徹底解説

更新日: 2025/10/1投稿日: 2025/9/25

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水素自動車とは?仕組みやメリット・デメリットを徹底解説

「水素自動車って本当に普及するの?」
「メリットやデメリットが知りたい」
「EVと水素自動車、どっちを選べば失敗しない?」

次世代のエコカーとして注目される水素自動車ですが、実際に購入を検討するとなると、多くの疑問や不安が浮かんできますよね。環境に配慮した選択をしたい一方で、高額な投資で後悔したくないという気持ちは当然です。

そこでこの記事では、水素自動車について以下の内容を解説します。

  • 水素自動車とEVの明確な違いと選択基準
  • 実用面でのメリット・デメリットの現実
  • 補助金が使える具体的な車種情報

データと事実に基づいた情報をお届けしますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

水素自動車とは?

水素自動車は、水素を利用して走行する自動車の総称です。ガソリンや軽油ではなく、水素をエネルギー源として動きます。

水素自動車には主に2つの種類があります。1つ目は「水素エンジン車」、2つ目は「水素燃料電池自動車(FCV)」です。それぞれ仕組みが異なるため、以下で詳しく解説していきます。

水素エンジン車

水素エンジン車は、ガソリンの代わりに水素をエンジンで燃焼させて走行する車です。基本的な構造は従来のガソリン車とほぼ同じで、燃料がガソリンから水素に置き換わったイメージになります。

仕組みを簡単に説明すると、タンクから供給された水素をエンジン内部で燃焼させ、その爆発力でピストンを動かして走ります。エンジンで燃料を燃やすため、エンジン音や振動は従来のガソリン車に近い印象があります

水素燃料電池自動車(FCV)

水素燃料電池自動車(FCV)は、水素と酸素を化学反応させて発電し、その電力でモーターを駆動させる車です。英語のFuel Cell Vehicleの頭文字を取ってFCVと呼ばれます。

電力でモーターを駆動させるため、仕組みは電気自動車(EV)に近いといえます。大きな違いは、EVが外部から電気を充電して蓄えるのに対し、FCVは車内で水素から電気を作り出す点です。

日本で実用化が進んでいる水素自動車は、ほぼFCVの状態です。トヨタのMIRAIやホンダのCR-V e:FCEVなど、一般の方が購入できる市販車はすべてFCVになります。このため、本記事の内容はFCVを中心に解説していきます。

電気自動車(EV)との違い

電気自動車(EV)との大きな違いは、利用するエネルギー源と発電方法にあります。両者の違いを理解すると、それぞれのメリット・デメリットが明確になります。

FCVには燃料電池が搭載されており、水素を補充することで自ら発電が可能です。水素ステーションで水素を補給すれば、車内で継続的に電気を作り出せます。

一方、EVは外部から電力を供給し、バッテリーに蓄電します。専用のコンセントや充電スタンドから電気を充電し、蓄えた電力でモーターを動かす仕組みです。

つまり、FCVは「車内で電気を作る」のに対し、EVは「電気を外部から受け取る」という違いがあります。この違いが、充電時間や航続距離、インフラの整備状況などに影響を与えています。

水素自動車の4つのメリットを電気自動車やガソリン車と比較して解説

水素自動車には、環境性能や実用性の面でいくつかのメリットがあります。ここでは、電気自動車やガソリン車と比較しながら、4つの主要なメリットを解説していきます。

1. 環境に非常に優しい

水素自動車が走行時に排出するのは水(水蒸気)のみで、二酸化炭素などの有害物質を一切排出しません。これは環境保全の観点から見ると、非常に優れた特徴です。

ガソリン車の場合、走行時に二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)などを排出します。これらは地球温暖化や大気汚染の原因となり、健康被害のリスクもあります。

さらに、水素燃料は下水汚泥や廃プラスチックなどからも製造可能です。電気のように化石燃料に依存しなくても済む可能性が高く、製造過程でもクリーンなエネルギー循環が実現できます。

カーボンニュートラルの実現や環境保全を本格的に考えるなら、水素自動車は最も理想的な選択肢の1つといえるでしょう。

2. 長距離走行が可能

水素自動車は1回の充填で長距離を走行できる点が、電気自動車と比べた際の大きなメリットです。航続距離の長さは、日常使いだけでなく長距離ドライブでも安心感につながります。

実際のFCVの例を見てみましょう。トヨタのMIRAI(Gグレード)は、1回の水素充填で約850km走行できます。ホンダのCR-V e:FCEVも約600km以上の航続距離を実現しています。一方、電気自動車の航続距離は車種によって大きく異なりますが、多くのモデルで300〜500km程度です。

特に長距離の移動が多い方や、家族でのドライブを楽しみたい方にとって、航続距離の長さは実用面で大きなアドバンテージになります。充電スポット探しに気を取られず、目的地までスムーズに移動できる安心感は大きいです。

3. 充填スピードが速い

FCVの場合、水素の補給時間は約3分ほどで完了します。この速さはガソリン車と同等レベルで、日常生活での利便性が非常に高いといえます。

電気自動車場合、家庭用の一般的な出力の充電器だと、満充電まで一晩かかることもあります。急速充電器を使用しても、車種や充電器の種類によっては30分から1時間程度必要です。

外出先で充電する際、30分以上の待ち時間が発生するのは予定が狂う原因になります。特に急いでいるときや、子どもを連れての移動では、この待ち時間がストレスになるでしょう。

FCVは、専用の水素ステーションで補充する必要はありますが、短時間で補充が完了するのは大きなメリットです。忙しいビジネスパーソンや、効率的に時間を使いたい方にとって、この利便性は見逃せません。

4. 静音性が高い

水素自動車は化学反応によって発電するため、走行時の音が非常に静かです。燃料を爆発させるガソリン車と比べると、その静かさは別次元といえます。

ガソリン車はエンジン内でガソリンを爆発させて動力を得るため、どうしてもエンジン音や振動が発生します。特に加速時やアイドリング時には、エンジン音が大きくなります。

一方、FCVはモーターで駆動するため、エンジン音がほとんど聞こえません。走行中に聞こえるのは、風切り音やタイヤの転がる音程度です。

静かな乗り心地を実現したい方や、住宅街など音を出したくない場所での利用を想定している方にとってはメリットになります

水素自動車のデメリット

水素自動車には多くのメリットがある一方で、現時点ではいくつかの課題も存在します。購入を検討する際には、これらのデメリットを正しく理解しておく必要があります。

水素ステーションの数が少ない

現状、日本国内の水素ステーションは都内を中心に、約150カ所程度しかありません。これは、ガソリンスタンドが全国に約2万7,000カ所、EV充電スポットが約3万カ所以上あることと比較すると、圧倒的に少ない数字です。

また、水素ステーションの分布にも偏りがあります。例えば東京都内には20カ所以上設置されており、都内での街乗りであれば比較的使いやすい環境が整っています。また、愛知県や大阪府など大都市圏にもある程度の数が設置されています。

しかし、地方に行くとステーション探しに苦労する可能性があります。県内に数カ所しかない地域も多く、長距離移動の際には事前のルート確認が欠かせません。

航続距離は長いものの、ステーションが見つかりづらいというリスクは頭に入れておくべきでしょう。特に地方在住の方や、頻繁に地方へ出かける方は、自宅周辺や移動ルート上にステーションがあるか確認してください。

水素燃料が高い

水素燃料はガソリンや電気と比較すると非常に高額です。ランニングコストを重視する方にとって、この燃料費の高さは大きな懸念材料になります。

ステーションによって価格は異なりますが、水素1kgあたり1,650円~2,200円程度が相場です。例えばトヨタMIRAIの場合、満充填に必要な水素量は約5.6kgのため、1回あたり9,000円~12,000円ほどかかる計算になります。

ガソリン車の場合、レギュラーガソリンが1リットル170円として、燃料タンク容量40リットルの車なら満タンで約6,800円です。ハイブリッド車ならさらに燃費が良く、燃料費は抑えられます。

EVの場合、家庭用電源で充電すれば電気代は1回あたり1,000円から2,000円程度です。水素燃料のコストは、ガソリンやEVと比べて明らかに高い状況にあります

政府は2030年を目標に、水素燃料の価格を下げるロードマップを策定しています。将来的にはコストダウンが期待されますが、現時点では高額なランニングコストを覚悟する必要があります。

車体価格が高い

燃料費だけでなく、車体価格も高額な傾向があります。燃料電池システムや水素タンクなど、特殊な装置を搭載するため、製造コストが高くなるためです。

新車の場合、FCVの価格は700万円前後が相場です。ガソリン車だと高級車レベルの価格帯になるため、予算的に厳しい方も多くいると考えられます。

なお、国や自治体の補助金を利用すれば、購入費用を抑えられます。車種や申請時期によって異なりますが、最大で200万円程度の補助が受けられるケースもある点は魅力です。ただし、補助金を差し引いても500万円を超える購入費用がかかります。

コストが高いこともあり、現状の普及率は非常に低い状態です。2024年度上半期のFCV販売台数はわずか318台で、全体の新車販売台数1,219,924台の中での構成比は約0.026%にとどまっています。(参考:日本自動車販売協会連合会

初期投資の高さは、多くの家庭にとって大きなハードルになるでしょう。長期的な視点でのコスト計算と、家計への影響を慎重に検討する必要があります。

補助金が利用できる水素自動車(FCV)の車種一覧

2025年9月現在、日本国内で購入できるFCVは限られています。ここでは、補助金対象となっている主要な車種について、特徴やスペックを詳しく解説します。

受けられる補助金の金額は変動する可能性があるため、詳しくは「一般社団法人 次世代自動車振興センター」の情報をご確認ください。

トヨタ クラウン(CROWN)セダン FCEV

メーカー名トヨタ
車両名クラウン Z
型式ZBA-KZSM30
一充填走行距離(km) (参考値)約820km
水素の燃費(km/kg) 【WLTC】148km/kg
販売価格730万円~

参考:CEV補助金対象 車両(FCV)- 次世代自動車振興センター

トヨタ クラウンセダンFCEVは、伝統的なクラウンブランドに水素燃料電池技術を組み合わせたモデルです。高級セダンとしての快適性と、環境性能を両立させています。

航続距離は約820kmで、長距離移動でも安心して使えます。水素充填時間は約3分と短く、忙しいビジネスシーンでもストレスなく利用できるでしょう。高級セダンの乗り心地と環境性能を求める方に適した選択肢です

トヨタ MIRAI(ミライ)

メーカー名トヨタ
車両名MIRAI Z
型式ZBA-JPD20
一充填走行距離(km) (参考値)約810km
水素の燃費(km/kg) 【WLTC】146km/kg
販売価格約821万円

参考:CEV補助金対象 車両(FCV)- 次世代自動車振興センター

トヨタMIRAIは、日本を代表するFCVとして2014年に初代モデルが発売されました。現行モデルでは、デザイン性と機能性が大幅に向上しています。

補助金が利用できるMIRAI Zの価格は約821万円です。実績のあるFCVを選びたい方や、トヨタブランドの信頼性を重視する方におすすめです

ヒュンダイ ネッソ(NEXO)

メーカー名ヒュンダイ
車両名ネッソ
型式ZBA-FE120
一充填走行距離(km) (参考値)820km
水素の燃費(km/kg) 【WLTC】– (情報なし)
販売価格約776万円

参考:CEV補助金対象 車両(FCV)- 次世代自動車振興センター

ヒュンダイ ネッソは、韓国の自動車メーカー・ヒュンダイが製造するFCVです。SUVタイプのボディで、家族での利用にも適しています。

航続距離は約820kmで、長距離ドライブでも安心です。充填時間は約5分と、他のFCVと比べてやや長めですが、実用上は問題ないレベルでしょう。SUVタイプのFCVを求める方や、広い室内空間を重視する方に向いた選択肢です

ホンダ CR-V e:FCEV

メーカー名ホンダ
車両名CR-V e:FCEV
型式ZBA-ZC8
一充填走行距離(km) (参考値)約621km
水素の燃費(km/kg) 【WLTC】129km/kg
販売価格約809万円

参考:CEV補助金対象 車両(FCV)- 次世代自動車振興センター

ホンダ CR-V e:FCEVは、人気SUVのCR-Vに燃料電池技術を搭載したモデルです。外部からの充電も可能なプラグインを持つタイプで、FCVとEVの両方の特性を持っています。

水素での航続距離は約621kmで、さらにバッテリーでの走行も可能です。この2つを組み合わせることで、より柔軟な使い方ができます。充電スタンドがあればEVとして使えて、水素ステーションがあればFCVとして使えるという利点は魅力です。

水素と電気の両方を使える柔軟性は、インフラ不足への不安を軽減してくれます。実用性を最優先する方にとって、魅力的な選択肢になるでしょう。

水素自動車は現時点では高額だが、今後に期待が持てるエコカー

水素自動車は、環境性能や走行性能の面で優れた特性を持っています。走行時に排出するのは水のみで、航続距離が長く、充填時間も短いという実用的なメリットがあります。

一方で、水素ステーションの少なさ、燃料費の高さ、車体価格の高額さといった課題も存在します。特にインフラ整備とコストの問題は、現時点での普及を妨げる大きな要因です。

購入を検討する際は、自宅周辺の水素ステーション状況と、長期的なランニングコストを慎重に確認してください。地方在住の方や、頻繁に長距離移動をする方は、特に注意が必要です。

環境に配慮した選択をしたい方、最新技術に関心がある方にとって、水素自動車は今後に期待が持てるエコカーです。現時点での課題を理解した上で、長期的な視点から検討してみてはいかがでしょうか。

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