ヨーロッパは電気自動車(EV)の普及に失敗したって本当?現状の数値データを解説
更新日: 2025/11/3投稿日: 2025/9/26
EV
「ヨーロッパのEV普及って失敗したって聞いたけど、本当なの?」
「EVの販売が減ってるらしいけど、これから車を買うときにEVは避けた方がいいの?」
「日本メーカーのハイブリッド戦略が正しかったって本当?」
ヨーロッパでEVの販売が急減しているというニュースを見て、混乱している方も多いのではないでしょうか。
特にドイツでは2024年8月に前年比約70%減という衝撃的な数字が報じられ、VWの工場閉鎖危機、メルセデス・ベンツやボルボの「EV100%目標」撤回など、「EVシフト失敗」を示唆する情報が相次いでいます。
一方で、実際の普及率データを見ると「完全な失敗」とは言い切れない側面もあり、判断に迷う方も多いでしょう。
車の買い替えを検討している方にとって、「EVを選ぶべきか、ハイブリッド車を選ぶべきか」という判断は、今後10年の満足度を大きく左右します。
結論から言うと、ヨーロッパのEV市場は「完全な失敗」ではなく「想定より大幅に緩やかな成長」の段階にあります。
2025年5月時点の普及率は15.4%と、日本(約2.57%)やアメリカ(約8%)を大きく上回る水準です。ただし、2035年の目標(新車販売100%電動化)達成は、現状のペースでは極めて困難な状況です。
本記事では、欧州自動車工業会(ACEA)や日テレNEWSなどの最新報道をもとに、ヨーロッパEV市場の実態を徹底解説します。
- ドイツで前年比70%減の衝撃:補助金打ち切りの真相
- メルセデス・ベンツ、ボルボが「EV100%目標」を撤回した理由
- 「日本メーカーの方針が正しかった」欧州メーカーが認めた現実
- EV販売が加速しない3つの構造的理由(価格・インフラ・残存価値)
- 2025年以降の現実的な着地点とあなたに最適な車選び
それでは、データと最新報道に基づいた欧州EV市場の実態を見ていきましょう。
【衝撃】ドイツでEV販売が前年比70%減:補助金打ち切りの真相

ヨーロッパのEV市場を語る上で、まず押さえておくべきはドイツでの急激な販売減少です。2024年8月、ドイツのEV販売台数は前年同月比で約70%減という衝撃的な数字を記録しました。
補助金打ち切りの経緯:憲法裁判所の判断が転機に
この急減の直接的な原因は、2023年12月のEV補助金プログラムの突然の打ち切りです。ドイツ政府は、新型コロナウイルス対策で使われなかった予算を転用して2024年末までプログラムを続ける予定でした。
しかし、憲法裁判所がこれを認めず、政府は補助金を即時中止。
補助金終了前のドイツでは、EV購入に対して最大9,000ユーロ(約140万円)の補助がありました。この補助がなくなることで、実質的な購入価格が大幅に上昇し、消費者の間で「高額なEVへの拒否感」が一気に広がったのです。
さらに、その後の予算編成をめぐって連立政権が崩壊し、2025年2月に総選挙が実施されました。政治情勢の不安定さから、補助金などのEV優遇措置の復活の見通しは立っていません。
この事例が示すのは、「補助金依存のビジネスモデルの脆弱性」です。政策変更一つで市場が70%も縮小するという現実は、EV普及が「経済合理性」ではなく「政策的誘導」に依存していたことを浮き彫りにしました。
「EVへの急速なシフトは失敗、日本メーカーの方針が正しかった」:ヨーロッパメーカーの方針転換

日テレNEWSの報道によれば、あるヨーロッパの自動車メーカーの関係者は「EVへの急速なシフトは失敗だった。日本メーカーの方針が正しく、さまざまな車種をバランス良く取り扱う必要があった」と語っています。
この発言は、トヨタを筆頭とする日本メーカーが推進してきた「全方位戦略」(ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車、EVを併存させる戦略)が、結果的に正しかったことを認めるものです。
ヨーロッパ主要メーカーの「EV100%目標」撤回が相次ぐ
EVの需要鈍化を受けて、ヨーロッパ主要メーカーが次々と野心的な目標を撤回しています。
| メーカー | 当初目標 | 撤回・修正内容 | 発表時期 |
|---|---|---|---|
| メルセデス・ベンツ | 2030年までに全車EV化 | 目標を事実上撤回。「顧客に押しつけてまで人為的に目標を達成しようとするのは理にかなっていない」 | 2024年2月 |
| ボルボ・カー | 2030年までに全車EV化 | 計画を撤回。「現実的かつ柔軟な姿勢で臨んでいく」 | 2024年9月 |
| アップル | 「アップル・カー」開発 | EV開発を完全中止 | 2024年 |
| フォルクスワーゲン | 2030年までに欧州販売の70%をEV化 | 初のドイツ国内工場閉鎖を一時検討(その後回避) | 2024年 |
特に注目すべきは、メルセデス・ベンツの撤回理由です。「顧客に押しつけてまで人為的に目標を達成しようとするのは理にかなっていない」という発言は、市場の現実と企業の理想のギャップを率直に認めたものです。
また、ボルボの「現実的かつ柔軟な姿勢」という表現は、EV一辺倒から複数の技術選択肢を認める方向へのシフトを意味しています。
スウェーデンという環境先進国の代表的メーカーでさえ、方針転換を余儀なくされているのが現状です。
さらに衝撃的なのは、アップルがEV開発から完全撤退したことです。巨額の資金と技術力を持つアップルでさえ、EV市場の厳しさを前に開発中止を決断しました。
これは、技術力だけでは市場を切り拓けない現実を示しています。
ヨーロッパの電気自動車の普及率(市場シェア率)は15.4%

では、衝撃的な報道が相次ぐ中、実際のヨーロッパのEV普及率はどうなっているのでしょうか。欧州自動車工業会(ACEA)の公式統計によると、2025年5月時点でのヨーロッパEV市場シェアは15.4%です。
これは、EU全体での新車登録台数に占めるバッテリー式電気自動車(BEV)の割合を示しています。
この数値を他の主要国と比較すると、ヨーロッパのEV普及は決して「完全な失敗」ではないことがわかります。
| 地域 | EV普及率(2025年) | 年間新車販売規模 | 評価 |
|---|---|---|---|
| ヨーロッパ(EU) | 15.4% | 約1,093万台 | 日米より高いが目標には遠い |
| アメリカ | 約8% | 約1,550万台 | 欧州の約半分 |
| 日本 | 約2.57% | 約420万台 | 欧州の約6分の1 |
ヨーロッパのEV普及率は、日本の約6倍、アメリカの約2倍という高水準にあります。EU自動車市場の規模は年間約1,093万台と、日本の2.5倍以上です。
この規模で15.4%のシェアは、約168万台のEVが年間販売されている計算になり、これは決して小さな数字ではありません。
ただし、EUが掲げる「2035年までに新車販売の100%を電動車にする」という目標から見ると、現状の15.4%は絶望的に不足しています。
目標達成には、今後10年間で年平均8.5ポイントの上昇が必要であり、これは過去の伸び率(年平均2〜3ポイント)を3倍以上上回るペースです。
また、2025年1〜5月のデータで注目すべきは、ハイブリッド車(HEV)のシェアが35.3%に達し、初めてガソリン車を上回ったことです。
これは、消費者が「完全なEVではなく、現実的な電動化」を選択している明確な証拠といえます。
「電動化」は進んでいるが、「EV化」は想定より大幅に遅れている——これが現在の欧州市場の正確な状況です。
以上のデータから、ヨーロッパのEV市場を「失敗」と断定するのは不正確です。より正確には、「政策目標に対して大幅に遅れている”深刻な伸び悩み”状態」と表現すべきでしょう。
ヨーロッパで電気自動車が普及しない3つの理由

ヨーロッパでEVの普及が期待通りのペースで進まない背景には、複数の構造的な問題があります。ここでは、消費者の購入判断に直接影響を与える3つの主要因を、具体的なデータとともに解説します。
理由①:充電インフラの地域格差と老朽化問題
充電インフラの地域格差が、ヨーロッパ全体でのEV普及を妨げる最大の要因です。国によって充電スタンドの整備状況に大きなばらつきがあり、「EVを買っても充電できない」という不安が購入を阻んでいます。
EY Parthenonの2024年調査によれば、公共充電ポイントの比率は国によって以下のような差があります。
| 国名 | 公共充電ポイント比率 | インフラ評価 | EV購入のしやすさ |
|---|---|---|---|
| フィンランド | 13.6% | 最も整備が進んでいる | ◎ |
| オランダ | 11.2% | 充電環境が良好 | ◎ |
| ドイツ | 8.4% | 中程度 | ○ |
| フランス | 6.8% | やや不足 | △ |
| マルタ | 3.6% | 大幅に不足 | × |
最高のフィンランド(13.6%)と最低のマルタ(3.6%)では、約10ポイント(約3.8倍)もの開きがあります。
この格差により、充電インフラが整っていない国では、EVを購入しても日常的な利用に不安が残るため、ガソリン車やハイブリッド車が選ばれ続けています。
さらに深刻なのは、既設の充電器の老朽化問題です。EV充電器の耐用年数は8〜10年とされており、2014年頃から整備が始まったインフラは、2022年以降に更新時期を迎えています。
しかし、採算が合わないことを理由に、事業者が契約満期で撤退するケースが増加しており、日本でも2020年に初めて充電器設置台数が減少に転じました。
特に以下の層にとって、充電インフラ不足は致命的な購入障壁となります。
- マンション・集合住宅の居住者:自宅に充電設備を設置できない(欧州でも日本でも共通の課題)
- 長距離移動が多いドライバー:経路上の充電スポット確保が不可欠
- 地方在住者:都市部に比べて充電スタンドの絶対数が少ない
この地域間・居住形態による格差を解消しない限り、EU全体でのEV普及率向上は困難でしょう。政府による補助金だけでなく、持続可能な運営モデルの構築が急務となっています。
理由②:車体価格が高く、補助金縮小で負担が急増
EVは同等クラスのガソリン車と比べて約20〜40%高額であり、これが最大の購入障壁となっています。価格差の主因は、高額なバッテリーコストです。
具体的な価格差を、実際の車種で比較してみましょう。
| 車種 | 価格 | ガソリン車との価格差 |
|---|---|---|
| 日産リーフ(EV/40kWh) | 324万円〜 | +114万円(+54%) |
| 日産リーフ(EV/62kWh) | 416万円〜 | +206万円(+98%) |
| トヨタ・カローラスポーツ(ガソリン) | 210万円〜240万円 | 基準 |
| トヨタ・カローラスポーツ(HEV) | 240万円〜270万円 | +30万円(+14%) |
同じCセグメント(中型車)で比較すると、EVはガソリン車より約100万円(30〜40%)、ハイブリッド車より約80万円高いことがわかります。
走行距離が長いモデルほど大容量バッテリーが必要となり、価格はさらに上昇します。さらに深刻なのは、購入補助金の縮小・終了です。
前述のドイツの例(約70%減)が示すように、補助金がなくなると市場は劇的に縮小します。主要国の補助金動向は以下のとおりです。
- ドイツ:2023年12月に補助金を突然終了(最大140万円の補助が消失)→販売70%減
- フランス:補助金額を段階的に削減中
- イギリス:2022年6月に個人向け補助金を廃止
補助金終了により、実質的な購入価格が100万円以上上昇したケースもあり、「補助金がなければEVは買えない」という構造的問題が浮き彫りになっています。
加えて、中国製EVへの高関税措置も価格高騰の一因です。EUは2024年、中国製EVに対して最大38%の追加関税を課すことを決定しました。
これは欧州ブランドを保護する目的ですが、結果的に消費者の選択肢を狭め、EV全体の普及を遅らせている側面があります。
価格が抑えられるガソリン車やハイブリッド車の需要が根強いのは、こうした経済合理性に基づく判断です。「環境意識」だけでは100万円の価格差は埋められない——これが消費者の本音です。
理由③:中古買取価格が安く、資産価値が急激に下がる
EVは新車価格が高い一方で、中古車としての買取価格が著しく低いという問題を抱えています。これは「リセールバリュー(残存価値)への不安」として、新車購入の大きな心理的障壁となっています。
主な原因はバッテリーの経年劣化です。リチウムイオンバッテリーは、使用年数や充電回数に応じて容量が低下します。
一般的に、8年〜10年で新品時の70〜80%程度まで劣化すると言われており、航続距離が短くなるのです。また、中古車購入者にとって、以下の点が大きな懸念材料となります。
- バッテリー交換費用の高さ:交換には100万円以上かかることも(車両価格の4分の1〜3分の1)
- 性能低下のリスク:実際の航続距離が公称値より大幅に短い可能性
- 長期保有時の不確実性:バッテリー寿命を超えた場合の対処法が不明
実際の減価を試算してみましょう。
| 経過年数 | EV(日産リーフ想定) | ガソリン車(カローラ想定) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 新車購入価格 | 400万円 | 250万円 | +150万円 |
| 3年後の買取価格 | 約120万円(30%) | 約150万円(60%) | -30万円 |
| 5年後の買取価格 | 約80万円(20%) | 約125万円(50%) | -45万円 |
| 減価額(5年間) | 320万円損失 | 125万円損失 | 195万円多く損失 |
※概算値。市場状況により変動します。
高額で購入したEVが、5年後には約200万円も多く価値を下げるという経済性の悪さは、特に定期的に車を買い替える層にとって見過ごせない問題です。
「総所有コスト(TCO)」で考えると、EVは燃料費(電気代)が安くても、減価の大きさで相殺されてしまうケースが多くあります。
実際の計算例はいかのとおりです。
- EV:電気代年間3万円 × 5年 = 15万円(ガソリン車より45万円安い)
- しかし減価差額:195万円多く損失
- 差し引き:195万円 – 45万円 = 150万円の損失
中古市場での評価が改善されない限り、新車購入への心理的なハードルは高いままでしょう。バッテリー性能保証の拡充や、交換費用の低減が急務となっています。
ヨーロッパのEV政策の変化:失敗から現実的な目標へ軌道修正

EUはEV販売の伸び悩みと産業界からの強い反発などの失敗を受けて、当初の厳格な規制を一部修正する動きを見せています。これは「理想から現実へ」の軌道修正とも言えます。
もともとEUは、2035年以降、ガソリン・ディーゼルなどの内燃機関車の新車販売を全面禁止する方針を2021年に打ち出しました。これは「実質的なEV100%化」を意味する極めて野心的な目標です。
しかし、この厳格な規制に対して自動車業界から強い反発があり、特にドイツ自動車工業会やポルシェなどの高性能車メーカーが激しく抵抗しました。
その結果、以下のような政策修正が進められています。
修正①:合成燃料(e-fuel)使用車は販売継続を容認
現在は合成燃料(e-fuel)を使用するエンジン車に限り、2035年以降も販売継続が認められる方向で調整されています。
合成燃料(e-fuel)とは、再生可能エネルギーを使って製造される燃料で、製造時と走行時のCO2排出を相殺することで「カーボンニュートラル」を実現できる技術です。この例外措置により、以下のメリットが生まれます。
- ポルシェなど高性能車メーカー:既存のエンジン技術を活かした製品開発が可能に
- 消費者:「EVかガソリン車か」の二者択一ではなく、第三の選択肢が増える
- 既存インフラ:ガソリンスタンドなどの既存インフラを活用できる
修正②:目標を「100%削減」から「90%削減」へ緩和提案
ドイツ自動車工業会は、2035年の目標を「内燃機関車100%削減」から「90%削減」へと緩和する提案をおこないました。これにより、一部の内燃機関車(商用車や特殊車両など)は継続販売が可能になります。
この提案の背景には、以下の現実的な課題があります。
- 商用車・トラック:長距離輸送に必要な航続距離をEVで実現するのが困難
- 自動車産業の収益性:急激なEVシフトによる投資負担と収益悪化
- 雇用への配慮:EV化による部品メーカーの雇用減少懸念(VWの工場閉鎖危機が象徴的)
現実的な目標設定により、自動車産業全体の収益性を維持しながら脱炭素化を進めることが狙いです。
こうした政策変更は、EV一辺倒ではなく、複数の技術選択肢を認める「技術中立」の方向へのシフトを意味します。消費者にとっては選択肢が広がる一方で、EV普及の加速には逆風となる可能性があります。
また、2025年1〜5月のデータではハイブリッド車(HEV)のシェアが35.3%に達し、初めてガソリン車を上回りました。
これは、「段階的な電動化」を選ぶ消費者が増えている証拠であり、政策もこの現実を反映せざるを得ない状況です。
ヨーロッパの自動車メーカーのEV動向とは

ヨーロッパの主要自動車メーカーは、市場の伸び悩みを受けてEV戦略の大幅な見直しを進めています。ここでは、代表的な5社の最新動向と、目標修正の背景を解説します。
BMW:積極姿勢を維持、2030年に50%目標
BMWは2030年までに販売台数の50%以上をEVにする目標を堅持しており、主要メーカーの中では最も積極的なスタンスを維持しています。
BMWの主力EVモデルは以下のとおりです。
| モデル | タイプ | 航続距離 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| iXシリーズ | SUV | 最大700km以上 | 長距離性能に優れる |
| i4シリーズ | セダン | 約590km | スポーティな走行性能 |
| i5シリーズ | セダン | 約580km | 5シリーズのEV版 |
| i7シリーズ | ラグジュアリーセダン | 約625km | フラッグシップモデル |
BMWは初期モデルであるi3シリーズ(2013年発売)から、バッテリーの性能と耐用年数を長く保つことを重視した開発を続けています。
最新モデルでは、バッテリー容量保証を8年/16万kmに設定するなど、残存価値への不安軽減にも注力しています。
また、BMWは既存のエンジン車プラットフォームを活用したEV開発により、開発コストを抑制しながらラインナップを拡充している点が特徴です。
メルセデス・ベンツ:2030年全車EV化目標を撤回
ベンツは当初2030年までに全車EV化を目指していましたが、2024年2月にこの目標を大幅に撤回しました。これは、主要メーカーの中で最も大きな戦略転換であり、欧州EV市場の厳しさを象徴しています。
| 時期 | 当初目標 | 修正後の目標 |
|---|---|---|
| 2025年 | 新車販売の50%をBEV/PHEVに | 「2020年代後半に最大50%」に変更 |
| 2030年 | 全車EV化 | 目標を事実上撤回 |
撤回の理由について、メルセデス・ベンツは「顧客に押しつけてまで人為的に目標を達成しようとするのは、理にかなっていない」と説明しています。
この発言は、市場の現実と企業の理想のギャップを率直に認めたものであり、EV需要の鈍化を挙げています。(参考:WebCG)代表的なEVラインナップは「EQシリーズ」です。
- EQS:フラッグシップセダン、航続距離700km超
- EQE:Eクラス相当のセダン
- EQS SUV / EQE SUV:SUVモデル
EQSは、Sクラスにも劣らない豪華な室内空間を実現したフラッグシップモデルですが、価格が1,500万円以上と高額なため、販売は伸び悩んでいます。
ベンツは今後、ハイブリッド車や内燃機関車の継続販売にも注力する方針です。
フォルクスワーゲン:減産と工場閉鎖危機
フォルクスワーゲンはグループ全体で、2030年までに欧州販売の70%をEVにする計画を掲げていましたが、販売不振により生産調整と初のドイツ国内工場閉鎖を検討する事態に陥りました(その後、労働組合との交渉により回避)。
2024年にVWが直面した厳しい状況はいかのとおりです。
- ドイツ工場での減産:EV需要低迷により生産ライン稼働率低下
- バッテリー工場建設の延期:中東欧での工場建設計画を延期
- 初の国内工場閉鎖検討:ドイツ国内で初めて工場閉鎖を検討(その後回避)
- 雇用調整の圧力:一部工場で人員削減の可能性
主力EVは「IDファミリー」です。
| モデル | タイプ | 価格帯 |
|---|---|---|
| ID.3 | コンパクトハッチバック | 約400万円〜 |
| ID.4 | SUV | 約550万円〜 |
| ID.5 | クーペSUV | 約600万円〜 |
| ID.Buzz | ミニバン | 約700万円〜 |
価格帯は比較的手頃に設定されていますが、中国製EVの価格攻勢(BYDなど)や補助金削減の影響で販売が伸び悩んでおり、コスト競争力の強化が今後の最重要課題となっています。
VWの苦境は、欧州自動車産業全体の構造問題を象徴しているのです。
ルノー:「正しい軌道に乗っていない」とCEOが認める
ルノーは2035年までに欧州での自動車生産をすべてEVにする目標を掲げていましたが、CEOのルカ・デ・メオ氏が「正しい軌道にまだ乗っていない」と公式に認めています。(参考:Reuters)
この発言は、欧州メーカーの現実的な苦境を象徴しています。ルノーは「ルノーEV」ブランドで開発を進めており、2024年に発売したルノー5(サンク)が注目を集めました。
ルノー5は、かつての人気モデルをEV化したレトロデザインが特徴で、価格は約330万円からと比較的手頃です。しかし、全体的なEV販売は計画を下回っており、目標達成には相当な加速が必要な状況です。
ルノーはまた、2024年3月に「欧州に宛てた手紙」という提言を発表し、欧州全体でのEV産業支援(いわば「欧州版エアバス構想」)を提案しました。しかし、ドイツなど他国からの反応は冷ややかです。
ステランティス:グループ戦略で2030年に500万台目標
ステランティスは2022年に、EVの世界販売を2030年に500万台とする計画を発表しました。
ステランティスは、以下の14ブランドを傘下に持つ巨大グループです。
- プジョー、シトロエン、オペル(欧州ブランド)
- ジープ、ダッジ、クライスラー(米国ブランド)
- フィアット、アルファロメオ、マセラティ(イタリアブランド)
各ブランドの個性を活かしながら、共通のプラットフォーム(STLA)を使用してコスト効率を高めている点が最大の特徴です。この「規模の経済」を活かすことで、価格競争力を確保する戦略です。
ただし、500万台という目標は現状の市場環境では極めて野心的であり、今後の修正も予想されます。
【結論】あなたはヨーロッパの電気自動車(EV)を買うべきか?ハイブリッド車を選ぶべきか?

EVを選ぶべきか、ハイブリッド車を選ぶべきかは、あなたの使用環境や予算によって最適解が大きく異なります。
欧州の事例が示すのは、「政策目標と市場の現実は必ずしも一致しない」ということです。2035年に本当にEV100%になるかは不透明であり、合成燃料(e-fuel)やハイブリッド車が長期的に併存する可能性が高まっています。
また、EU政策も「技術中立」の方向へシフトしており、消費者にとっては選択肢が広がる展開です。
ヨーロッパのEV市場は長期的には拡大する方向ですが、その道のりは当初の想定よりも大幅に緩やかになり、複数の技術選択肢が併存する形で進むでしょう。
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