自動運転に使われている10の技術を徹底解剖!2025年最新の現状や課題も紹介
更新日: 2025/10/1投稿日: 2025/9/28
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「自動運転って本当に実現するの?」
「どんな技術が使われているか知りたい」
「現状はどれくらい実現している?」
自動運転技術は、ニュースなどで頻繁に取り上げられるようになりました。しかし、実際にどこまで技術が進んでいるのか、本当に安全なのか、わからない方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、自動運転の技術について、以下の内容を解説します。
- 自動運転に使われている10の技術とその役割
- 日本や世界における自動運転の実現状況
- 自動運転技術が抱える課題と今後の展望
自動運転の仕組みから現状の進捗まで、わかりやすく解説していきます。最後まで読んでみてください。
自動運転に使われている10の技術

自動運転には、複数の先進技術が組み合わされています。ここでは、自動運転を支える10の主要技術について解説します。
1.AI技術
AIは、自動運転の中核を担う頭脳とも呼べる機能です。周囲の状況を認識し、次の行動を予測し、最適な判断を下す役割を果たします。
AIは、過去の膨大な走行データから学習を行っています。例えば、歩行者が飛び出してくる場面、急ブレーキをかける車、信号が変わるタイミングなど、数百万パターンのデータを学習することで、これから起こり得る予測不能な状況にも対応できるようになるのが特徴です。
AI技術は発展が目覚ましく、Waymoやテスラなどの企業は、それぞれ独自のアプローチでAI技術の実用化に着手しています。
2.認識技術
認識技術は自動運転車の「目」に相当する、周囲の環境を正確に把握するための技術です。
主に、以下のようなセンサーを用いて、状況を判断します。
- LiDAR(ライダー):レーザー光で対象物の距離や形状を測定
- カメラ:信号や標識、車線を視覚的に認識
- ミリ波レーダー:電波で前方車両との距離を測定
- 超音波センサー:近距離の障害物を検知
現状の自動運転車では、これらを複数組み合わせる「マルチセンサーフュージョン」が主流です。各センサーの長所を活かし、悪天候時などの弱点を補い合います。例えば、雨の日はカメラの精度が落ちますが、レーダーやLiDARなどの影響を受けにくい機能で状況を判断します。
3.位置特定技術
位置特定技術は、車両の現在位置を高精度で把握するための技術です。一般的なGPSでは数メートルの誤差が生じるため、車線単位での正確な位置把握が必須の自動運転では、GPSだけでは不十分です。
そこで、高精度な3次元地図データを組み合わせることで、車線単位での自車位置の特定が可能になります。地図には、道路の形状、車線の幅、標識の位置などが詳細に記録されています。
道路工事や新しい建物の建設など、環境の変化に対応するため、地図は常に最新の状態に保たれなければなりません。
4.通信技術
通信技術は、車両が他の車両や交通インフラと情報をやり取りする技術で、V2X(Vehicle-to-Everything)とも呼ばれています。
5Gなどの高速通信技術を活用し、以下のような情報交換を行います。
- 車両間(V2V):前方車両の急ブレーキ情報を共有
- インフラとの通信:信号機から次の信号変更タイミングを受信
- ネットワーク経由:動的な地図データや渋滞情報を取得
通信技術の向上により、見通しの悪い交差点での事故防止や渋滞緩和が期待されます。
5.予測技術
予測技術は、周囲の車や歩行者の動きを先読みして、危険を回避するための技術です。
具体的には以下のような予測を行います。
- 右前の車がウィンカーを出したら減速する
- 歩行者が横断歩道に近づいたら徐行する
- 雨の日には車間距離を長めに確保する
- 子どもが道路脇にいたら飛び出しに備える
人間の運転者が無意識に行っている判断を、AIが学習して再現します。経験豊富なドライバーの運転データを分析し、危険予測のパターンを学んでいく技術です。
6.セキュリティ技術
セキュリティ技術は、自動運転車をサイバー攻撃から守る技術です。
ネットワークに接続された自動運転車は、常にハッキングのリスクにさらされています。攻撃者がセンサーデータを改ざんしたり、車両の制御システムを乗っ取ったりすれば、人命に関わる重大な事故につながるかもしれません。
そのため、車両のハードウェアからソフトウェア、通信に至るまで、多層的な防御を講じることが不可欠です。例えば、通信の暗号化、不正アクセスの検知システム、重要データのバックアップなどを実装して、サイバー攻撃から身を守ります。
7.データ処理技術
データ処理技術は、膨大な情報をリアルタイムで処理するための技術です。
自動運転車は、カメラ、レーダー、LiDARなど複数のセンサーから、毎秒多くののデータを受け取ります。この情報を瞬時に分析し、次の行動を決定しなければなりません。そのため、膨大な計算処理を、低消費電力かつ高速に実行する能力が求められるのです。
データ処理技術には、NVIDIAなどの企業が開発する高性能なSoC(System on a Chip)が搭載されます。
8.ヒューマンマシンインタフェース技術
ヒューマンマシンインタフェース技術(HMI)は、システムとドライバーの円滑なコミュニケーションを可能にする技術です。
システムが何を認識し、次に何をしようとしているのかをドライバーに分かりやすく伝えます。例えば、画面表示、音声案内、ステアリングの振動などで情報を提供します。例えば運転に慣れているドライバーには最小限の情報、不慣れなドライバーには詳細な説明を表示するなど、個別対応が可能です。
9.プランニング技術
プランニング技術は、最適な走行ルートを計算するための技術です。
単純に最短距離を提示するナビゲーション機能とは異なり、道路の混雑状況や工事情報、天候などを考慮して、走行ルートを動的に調整します。
配送トラックなど、複数の場所を効率的に回るルート設定も求められます。例えば、10か所の配達先を最短時間で巡回するルートを計算します。交通状況がリアルタイムで変化する中、常に最適解を導き出すのです。
10.ドライバーモニタリング技術
ドライバーモニタリング技術は、運転者の状態を監視するための技術です。カメラなどを用いて、運転者の異常を検知します。
例えばm頭の傾き、まばたきの回数、視線の方向などを分析し、居眠り運転や脇見運転を未然に防ぎます。
ドライバーモニタリングは、国土交通省によりガイドライン化されている技術です。自動運転レベル3以上では、システムが運転を担当する場面がありますが、緊急時にはドライバーが対応しなければなりません。そのため、ドライバーが運転可能な状態にあるか常に監視する必要があるため、ドライバーモニタリングの導入は必須とされています。
自動運転技術はどれくらい実現している?日本や世界の現状や課題を解説

自動運転技術の開発は着実に進んでいます。ここでは、日本と世界の実現状況について解説します。
現状は「レベル4」の実証実験や導入が進められている
自動運転は、レベル0からレベル5まで6段階に分類されます。レベルが上がるほど、システムが担う役割が大きくなります。
各レベルの定義は以下の通りです。
レベル | 内容 |
レベル0 | ・システムによる運転支援機能がない状態 ・運転や操作はすべて人間のドライバー |
レベル1 | ・システムが「ハンドル操作」または「アクセル・ブレーキ操作」のどちらか一方を部分的に支援 ・運転の主体は人間のドライバー |
レベル2 | ・システムが「ハンドル操作」と「アクセル・ブレーキ操作」の両方を同時に支援 ・運転の主体は人間のドライバー |
レベル3 | ・高速道路の渋滞時など、特定の条件下において全ての運転操作をシステムが実施 ・システムから要請があった場合は、直ちに人間のドライバーが運転操作を行う |
レベル4 | ・特定の走行環境条件(場所や天候など)の中であれば、緊急時も含めて全ての運転操作をシステムが担う |
レベル5 | ・場所や天候などの条件に一切の制限なく、いかなる状況でもシステムが運転を担う、完全な自動運転 ・ハンドルやアクセル、ブレーキペダルといった手動運転のための装置も不要 |
現在はレベル4の実証実験や導入が進められている段階です。レベル4では、高速道路や特定エリア内など、限定された条件下で完全自動運転が可能になります。
世界的にこのレベル4の導入が進んでおり、特に中国や米国では、レベル4技術が大きく進展しています。例えば、サンフランシスコなどの一部地域では、Waymoの自動運転タクシーが一般利用者を乗せて走行しています。中国の北京や上海でも、百度(Baidu)が開発した自動運転タクシーがサービスを提供中です。
日本では現在、以下のような導入事例があります。
実施地域 | 運行形態 | 実施内容 |
---|---|---|
福井県永平寺町 | 自動運転バス | ヤマハ製の7人乗り電動カート「AR-07」を活用し、曹洞宗大本山永平寺の参道入口と周辺施設を結ぶ約2kmの区間で運行。 |
東京都大田区 | 自動運転バス | HICity内や羽田空港第3ターミナルを結ぶ公道の一部で運行。2024年6月には民間企業として初めて公道でのレベル4運行許可を取得 |
長野県塩尻市 | 自動運転バス | JR塩尻駅と市役所を結ぶ区間を含む公道を、時速35kmで走行する日本初の認可事例 |
市販車として発売されたのは「レベル3」まで
市販車として発売された自動運転車は、レベル3が最高です。ホンダのレジェンドが、世界初のレベル3自動運転車として2021年に発売されました。ただし100台限定のリース販売だったため、現在は購入できません。
現在、一般に購入できる市販車は、レベル2(運転支援付き)が最高レベルです。テスラのオートパイロット、日産のプロパイロット、トヨタのアドバンストドライブなどがレベル2に該当します。これらのシステムは運転を支援しますが、ドライバーは常に前方を監視し、いつでも対応できる状態でいなければなりません。
自動運転技術の実現における課題とは

自動運転技術は進展していますが、実用化にはまだ課題が残っています。ここでは、主な3つの課題について解説します。
技術面の改善
現在の技術では、ドライバーが介在しなくてもよいレベル4以上の自動運転の実現には、まだまだ課題が残っている状態です。
人間は、過去の経験や直感を使って複雑な状況に対応できます。しかし、AIは学習していないパターンに遭遇すると、適切な判断ができない場合があります。
例えば、工事現場の誘導員の手信号、落下物を避ける車の動き、子どもがボールを追いかけている状況など、イレギュラーな状況には弱いです。これらを正確に認識し、安全に対応するには、さらなる学習データの蓄積と、AIの判断能力向上が必要です。
加えて、悪天候時の認識精度も改善の余地があります。豪雨や吹雪、濃霧の中では、カメラやセンサーの性能が低下します。あらゆる気象条件で安全に走行できる技術の確立には、まだまだ遠いのが現実です。
インフラ整備
自動運転車が安全に走行するには、道路標識や車線が明確に認識できる必要があります。しかし、日本の道路には、標識が古くて見えにくい箇所、車線が消えかけている道路、複雑な交差点などが数多く存在します。
加えて、高速通信のためのネットワーク通信網の整備も不可欠です。都市部では整備が進んでいますが、地方ではまだ十分ではなく、一部エリアではそもそも電波が通じないという状況になっています。
これらの状況が改善されて、はじめて自動運転の実現が可能です。
法整備
自動運転車が事故を起こした場合、誰が責任を負うのかを明確にする必要があります。ドライバーなのか、車両メーカーなのか、システム開発者なのか、法律で定めなければなりません。
また、保険制度の整備も必要です。自動運転車の事故に対応した保険商品の開発、保険料の算定方法、補償範囲の明確化など、解決すべき課題が残っています。
自動運転技術に関するよくある質問
自動運転技術について、よく寄せられる質問に回答します。
自動運転は絶対無理って本当?
自動運転は絶対無理ではありません。実際、レベル4であればすでに実用化されています。
米国や中国では、自動運転タクシーが一般の人を乗せて営業運転しています。Waymoは累計数千万キロ以上の走行実績があり、事故率は人間のドライバーよりも低いというデータもあるほどに、活発に利用されているのが現状です。
完全自動運転(レベル5)の実現にはまだ時間がかかりますが、高速道路や特定エリア内など、条件を絞れば、安全に運用できるレベルに到達しています。
技術は日々進化しており、AIの判断精度、センサーの性能、通信速度はすべて向上し続けています。今後の技術の発展にも、十分期待が持てるでしょう。
自動運転の実現は何が難しい?
自動運転の実現で難しいのは、予測不能な状況への対応です。高速道路のように、車が決められた方向に走り、トラブルの少ない環境では、自動運転はすでに高い精度を達成しています。しかし、市街地の走行は格段に難しくなります。
歩行者の飛び出し、自転車の急な進路変更、工事による車線規制など、予測不能な要素が多数存在します。これらすべてに安全に対応するには、膨大な学習データと、高度なAIの判断能力が必要です。
自動運転において日本は遅れている?
日本は、米国や中国と比べると実用化のスピードは少し遅れています。
米国では、Waymoが2018年から自動運転タクシーの商用サービスを開始しています。中国でも、百度が複数の都市で自動運転タクシーを運行中です。
日本が遅れている理由は、慎重な規制と安全基準の高さにあります。日本では、安全性が十分に確認されるまで、実用化を認めない方針を取っています。事故が起きた場合の社会的影響を考慮し、石橋を叩いて渡るアプローチを選んでいる状態です。
ただし、技術力自体は決して劣っていません。トヨタ、ホンダ、日産などの自動車メーカーは、高度な運転支援技術を開発しています。実際、市販車で初めてレベル3の自動運転を実現したのは、ホンダの国産車です。いまは実証実験段階ですが、今後の技術の発展に期待しましょう。
自動運転技術は今後さらに発展していくと考えられる
自動運転技術は、AI、センサー、通信など複数の先進技術を組み合わせて実現されています。現在はレベル4の実証実験や導入が進んでおり、海外ではすでに自動運転タクシーが運行中です。
日本でも2025年から2026年にかけて、複数の地域で実用化が予定されています。市街地での完全自動運転にはまだ課題が残っていますが、高速道路や限定エリアでの運用はすでに現実的です。
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