電気自動車(EV)を自宅で充電するには?設備の設置方法や費用についても徹底解説
更新日: 2025/6/5投稿日: 2025/5/30
EV
電気自動車(EV)ユーザーにとって、スムーズに充電ができる環境は欠かせません。そこで「自宅でも充電できるように、設備を設置したい」と考えている方もいるのではないでしょうか?
自宅に設備を設置することで、いつでも自由に充電ができるようになります。一方で、設置するためにはいくつかの条件があるため、ひとつずつクリアしていくことが大切です。
この記事では、EVの自宅充電設備について、以下の内容を解説します。
- 自宅充電設備の基礎知識
- 主なタイプ
- 設置する工事の流れ
- メリット・設置の注意点
自分の車種に合う充電設備をスムーズに導入したいと考えている方は、ぜひ最後まで記事をご覧ください。
電気自動車(EV)の自宅充電設備とは?基礎知識を解説

自宅充電設備とは、その名の通り電気自動車を自宅で充電するために必要な専用設備のことです。
以下では、自宅充電設備の基礎知識について紹介します。
充電設備の設置には工事が必要
EV充電には大量の電力を扱うため、通常の家庭用コンセントは使えず、専用の充電設備を設置する工事が必要です。
「スタンドタイプ」や「壁掛け」など、自宅のレイアウトやデザインに合わせたものを選択し、工事によって設置します。
法律上、自分で勝手に配線工事を行うことは禁止されており、第二種電気工事士以上の有資格者による施工が義務付けられています。無資格者が工事を行うと違法となるだけでなく、誤った施工による感電事故や火災のリスクも高まるため、注意が必要です。
DIYではなく、必ず資格を持つ専門の電気工事業者に依頼して、安全に設置してもらいましょう。
電源は200Vが基本
充電コンセントの電圧には「100V」と「200V」がありますが、100Vだと充電に時間がかかりすぎるので、現実的ではありません。そのため、基本的には200Vを設置することとなります。
ただし、200Vの自宅充電設備を設置する場合は、200Vに対応した電線を引かなくてはなりません。
自宅が200Vに対応していない場合、充電器設置前に分電盤の交換や、200V用の配線増設などの電気工事が必要です。
近年に建てられた戸建て住宅であればまず問題ありませんが、築20年以上などの古い住宅は対応していない可能性があるため、注意しましょう。
充電器のタイプは4種類
自宅用の充電器のタイプは、以下の4種類です。
- 壁付けコンセントタイプ:コンセントのみを設置する充電器
- 壁掛けタイプ:壁面に設置する充電器
- スタンドタイプ:自立型の充電器
- V2H機器タイプ:「Vehicle to Home」という意味。家庭などに電力を供給できる機能を持った充電器
中でも手軽に導入できる壁付けコンセントタイプが主流で、EV購入時に付属の充電ケーブルを差し込んで充電できます。
また、近年では短時間で充電を完了させるために、6kW対応のスタンド型充電器を設置する家庭も増えています。6kW充電器は機器価格・工事費用が高額になりますが、短時間で満充電にできる点がメリットです。
上記のように、充電器のタイプは様々なので、用途や予算に応じて柔軟に決定することが可能です。
出力は「3kW」と「6kW」が存在
自宅向けEV充電設備の出力は、主に3kWと6kWの2種類です。6kWのほうが出力が強く、満充電までの時間を縮めることが可能です。
ただし一般的なコンセントタイプの充電器は3kWのみで、6kW充電を行うには高性能な専用機器が必要となり、設備費用が高額になります。
自宅用の充電設備の場合、夜間に充電するなど、急ぎで充電する必要性は低いかもしれません。その場合は従来通りの3kWを利用し、日中で急ぎで充電する機会が多い場合は、6kWタイプを検討するとよいでしょう。
電気自動車(EV)の自宅充電設備の4つのタイプ

こちらでは、自宅充電設備のタイプを4つ紹介します。
- 壁付けコンセントタイプ
- 壁掛けタイプ
- 自立スタンドタイプ
- V2H機器タイプ
1. 壁付けコンセントタイプ
壁付けコンセントタイプは、家庭用EV充電設備の中でも最も手軽で導入コストが安く、多くの家庭に普及しています。基本的なコンセント差し込み口を、EV用に取り替えるだけのシンプルな施工がメリットです。
ただし駐車スペースと壁面の距離が近くないと設置が難しいため、設置場所の条件には注意が必要です。
また、充電時には車載の充電ケーブルを使用しますが、このケーブルは制御ボックス付きで重量があるため、充電後に抜いて片付ける手間にも留意しましょう。
電源は100Vと200Vから選択できますが、充電時間短縮のため、多くの家庭で200Vコンセント(出力約3kW)が採用されています。一般的な設置工事費は4万円から12万円ほどです。
2. 壁掛けタイプ
壁掛けタイプの充電器は、自宅の外側に専用ボックスとケーブルを取り付けるタイプで、見た目もスマートな充電設備です。デザイン性に優れた製品も多く、住宅の外観に調和するよう意識して設計されています。
壁掛けタイプのうち、充電ケーブルが本体に一体化されている機種は、都度ケーブルを準備する手間がなく、車の充電口に差し込むだけで手軽に充電できます。ケーブルは長いものだと5~10mほどあるため、毎回取り出すのが手間に感じる方にとっては、メリットが大きいでしょう。
高性能なモデルでは6kW出力に対応しており、3kWタイプに比べてフル充電までの時間を半分程度に短縮可能です。
ただし本体価格および工事費用はおよそ20万円以上と、コンセントタイプに比べ割高になります。
3. 自立スタンドタイプ
自立スタンドタイプの充電器は、商業施設や公共施設によく見られる独立型の充電設備です。家庭では設置費用の高さもあり、導入例はそこまで多くありません。
壁面に頼らず自立するため、家と駐車場が離れている場合でも、自宅からの距離を気にせず設置場所を選べるのが最大のメリットです。全体的にデザイン性が高く、製品によっては複数の車を同時に充電できる機種も存在します。
設備本体と工事の費用は設置費用が高めで、一般的に導入には最低でも20万円前後が必要です。また、設置する際は、固定のための基礎工事が必要になるケースもあります。
4. V2H機器タイプ
V2H(Vehicle to Home)機器タイプは、EVと家庭間で電力を双方向にやり取りできる充放電設備です。EVから家庭への給電が可能となり、例えば災害時に停電が起きた際には、家で電気が使える非常用電源として活用できます。
実際、日産リーフのように40kWh級のバッテリーを搭載したEVなら満充電で家庭の電気を数日まかなうことができ、60kWh級のモデルでは3~4日程度の電力供給も可能です。
非常用電源として使える点が大きな魅力ですが、V2H機器の導入コストは非常に高額で、設備本体だけで50万円以上の費用がかかります。
自宅にEVの充電設備を設置する工事の流れを4ステップで解説

こちらでは、自宅に充電設備を設置する工程を紹介します。
1. 充電タイプを選ぶ
まずは工事前に、設置する充電設備と充電機器を選択します。初期費用を抑えたい場合は「壁付けコンセントタイプ」、6kW充電がしたければ「壁掛けタイプ」など、予算や自宅のレイアウトなどを踏まえたうえで検討しましょう。
2. 施工業者を選ぶ
充電設備の施工には有資格者が必要なため、自分で設置することは困難です。価格だけでなく、施工実績やアフターサービスなどを比較し、業者を決めていきましょう。
もし充電設備の設置とEVの購入を同時に行う場合、ディーラーが提携する施工業者に安く依頼できる可能性があるため、確認するのがおすすめです。
3. 業者の下見に立ち会う
業者が決まったら、まずは下見に立ち会います。下見では、おもに以下の点をチェックします。
下見でチェックする内容
- ブレーカーが200V対応か
- 契約しているアンペア数
- 設置場所とブレーカーは15m以内にあるか
- 設置のための壁面や地面の工事が必要か
下見して、特に問題がなければ、工事へと進みます。
4. 契約後に工事に立ち会う
工事内容と見積もり、日程が確定し、契約が成立したら、いよいよ工事へと進みます。
住宅の状況にもよりますが、一般的に工事は半日~数日で完了します。例えばコンセントタイプでは6時間程度で終了することが多く、複雑な工事でも2日以内に収まることが一般的です。
騒音対策を確認した上で工事に臨み、最後に施工業者と配線・機器の動作を点検します。これで充電設備が正常に動作することを確認し、工事は完了です。
電気自動車(EV)の自宅充電設備を設置するメリット3選

EVの充電は、専用の充電スタンドへ行けば、自宅以外でも問題なく可能です。
そのうえで、自宅に設備を用意するメリットを3つ紹介します。
1. いつでも自宅で充電できる
EV用の家庭用充電設備があれば、いつでも好きなタイミングで充電できるようになります。公共の急速充電器では時間帯によって混み合って待ち時間が発生することがありますが、自宅充電なら順番待ちのストレスもありません。
例えば深夜や夜間に充電しておけば、次の日の移動に備えて効率よく電力を補給できますし、早朝から充電スポットに行く必要もなくなります。
ガソリン車と比較しても、家で燃料を補給できるという点は、便利に感じるでしょう。
以上の点から、自宅充電は日常的にEVを利用する人にとって大きな魅力です。
2. 充電費用が安い
自宅で充電すれば、自宅の電力契約に基づいた電気料金で充電できるため、公共の充電スポットを利用するより経済的です。
たとえばe-Mobility Powerの充電スタンドをビジター利用した場合と比較します。
加盟店の普通充電器は、6kWで1分あたりの料金は8.8円です。6kWhを充電するには、8.8円×60 = 528円がかかります。
自宅での電気代は、全国家庭電気製品公正取引協議会が提示する「新電力料金目安単価」によると、31円/kWhです。
6kWhを充電する場合、6×31円=186円で済みます。
単純計算のため、電気ロスなどは考慮していませんが、充電スタンドを使うよりも3分の1程度で充電できるのは、大きなメリットです。長く使えば、設置費用も十分ペイできるでしょう。
3. 工事に補助金が下りる場合もある
自宅充電設備の導入には初期投資が必要ですが、自治体による補助金や助成金を利用できるケースがあります。
例えば東京都では戸建住宅向けの充電設備普及促進事業により、EV充電器設置の購入費を、1基最大30万円まで助成しています。(通信機能付き充電設備の場合)
補助金制度を上手に活用すれば、工事費用の負担を大幅に軽減できるでしょう。導入前には申請期限や対象設備を確認し、条件に合った機器を選んでみてください。
電気自動車(EV)の自宅充電設備を設置する際の注意点3選

こちらでは、充電設備を設置する際の注意点について解説します。
1. 分電盤が200V対応かチェックする
自宅に充電器を設置する際は、まず分電盤が200V対応であるか確認しましょう。電気自動車の充電器は基本的に200V電源で動作するため、古い建物などで100Vのみの場合は、200Vに対応させる工事が必要です。
100Vの充電器も存在はしますが、充電がかなり遅くなるため、あまりおすすめできません。
分電盤を200Vに対応させるためには、追加工事の手間や費用がかかります。そのため、事前に電力会社や専門業者に確認することが大切です。
2. 契約アンペア数が60Aかチェックする
充電器の出力をフルに使うには、契約電力容量(アンペア数)にも注意が必要です。
仮に契約アンペア数が40Aの場合、一般的な自宅用の普通充電器(3kW程度)でも不足することが多く、ブレーカーが落ちる要因となります。200V・30Aで充電するには契約60A以上が理想です。
3. 環境によっては設置が難しい場合もある
集合住宅などでは、居住者全員の合意や駐車スペースの確保が難しく、自宅充電設備の設置に制約が出る場合があります。屋外に設置する場合や分電盤から駐車場までの配線が長い場合は、工事費が増えてしまうため、注意が必要です。
設置のハードルは住宅形態によって大きく異なるため、計画段階で専門業者に相談し、設置可否を確認することが大切です。
【まとめ】自宅に電気自動車(EV)の充電設備を設置するには事前確認が重要
自宅にEVの充電設備を設置するのは、EVユーザーにとってメリットが豊富です。ただし、設置するにはいくつかの条件をクリアしないといけないため、最初に自宅の状況をチェックし、業者と打ち合わせる必要があります。
自治体によっては助成金などを使ってお得に設置できることもあるため、まずは業者に問い合わせてみてください。
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