【2026年版】マルチパスウェイとは?今注目される理由やトヨタやスズキの具体的な戦略を解説

更新日: 2026/6/27投稿日: 2026/4/19

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【2026年版】マルチパスウェイとは?今注目される理由やトヨタやスズキの具体的な戦略を解説
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2024年ごろから、自動車関連のニュースでは「マルチパスウェイ」という言葉をよく耳にするようになりました。

マルチパスウェイとはトヨタが提唱した、脱炭素達成のための戦略です。2026年現在、電気自動車(EV)の成長が鈍化するなかで、現実的な脱炭素の手段として注目を集めています。

この記事では、マルチパスウェイのメリット・デメリットから各自動車メーカーの最新の戦略まで詳しく解説します。

記事を読めば、マルチパスウェイの現在から今後の展開までがスムーズに理解できます。ぜひ最後までご覧ください。

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マルチパスウェイとは

まずマルチパスウェイの概要や基礎知識について、詳しく解説します。

EVに限らない「全方位」の脱炭素戦略

「マルチパスウェイ」とはトヨタ自動車の豊田章男会長が提唱した、電気自動車(EV)だけに依存しない脱炭素戦略のことです。

2009年頃から脱炭素の有効な手段として注目されてきたEVですが、現在は成長の停滞期にあります。そこで注目されているのが、さまざまな車種(カテゴリー)を活用して自動車での脱炭素を目指すマルチパスウェイです。

マルチパスウェイの主なカテゴリー

  • ガソリン車(ICE)
  • ハイブリッド(HEV)
  • 電気自動車(EV)
  • プラグインハイブリッド(PHEV)
  • 燃料電池車(FCEV)
  • 水素エンジン車(H2-ICE)

マルチパスウェイでは国や地域の情勢・道路事情に応じて、最適なカテゴリーを供給します。これにより、特定の技術や資源に依存するリスクを分散できるのが大きな魅力です。

とくにレアメタルの多くを中国からの輸入に頼っている日本では、情勢次第でEV部品の供給が困難になります。そこで中国依存のリスクを減らす意味でも、マルチパスウェイは非常に合理的な戦略といえます。

国や地域のエネルギー事情に則した選択肢を導入

世界中のあらゆる環境で、EVが常に最適解になるとは限りません。たとえば、電力供給が不安定な地域や寒冷地では、EVのバッテリー性能は大きく低下します。

そのため自動車メーカーは、以下のように各地域のエネルギー事情に合わせた選択肢を導入する必要があります。

地域特性供給すべきカテゴリー
再生可能エネルギーが豊富な国・地域・電気自動車(EV)
・燃料電池車(FCEV)
火力発電の依存度が高い国・地域・ガソリン車(ICE)
・ハイブリッド(HEV)
バイオ燃料が作りやすい地域バイオ燃料に対応したICE

臨機応変な供給により、その土地のエネルギーを有効活用し、インフラ整備のコストと時間を削減可能です。

EVの成長が停滞している現在、マルチパスウェイは比較的早期に実現可能な脱炭素対策として注目されています。

マルチパスウェイのメリット3選

マルチパスウェイには、大きく分けて以下3つのメリットがあります。

  1. ライフスタイルに合わせてクルマが選べる
  2. インフラの不安が解消できる
  3. 今ある愛車に長く乗れる

1. ライフスタイルに合わせてクルマが選べる

マルチパスウェイでは、ユーザーは居住環境や走行距離に応じて最適なクルマを自由に選択可能です。

もし世界がEV一辺倒になると、集合住宅に住む人や長距離を走る人に不便を強いてしまいます。そんな状況で脱炭素を達成しても、人々に寄り添っているとはとてもいえません

また、クルマに求める価値観は人それぞれであり、多様なニーズに応えることが大切です。選択肢の多様性を保つことは、結果的にユーザーの満足度向上に直結します。

2. インフラの不安が解消できる

2026年現在でも、充電器の不足や充電渋滞といったEVのインフラ課題は完全に解消されていません。インフラが完全でない状態でEVを本格導入しても、一般への普及は夢物語です。

しかしマルチパスウェイであれば、インフラが未整備の地域でも移動の自由を損なわずに済みます

電力需給が厳しい国では、全車両をEVにすると多大なリスクを背負います。そのような国でエネルギー供給網が整うまでの間、既存のガソリンスタンドを活用できるのは大きな強みです。

マルチパスウェイはインフラ整備が進むまでの、現実的なつなぎ役として最適な戦略です。

3. 今ある愛車に長く乗れる

EVへの移行を強行すると、今あるガソリン車に対するサポートなども終了する懸念があります。これは、今の愛車を大切にしているユーザーにとって、非常に大きな不安要素となるでしょう。

しかし、合成燃料(e-fuel)などの開発が進めば、今の車にそのまま乗り続けられる可能性があります。

合成燃料は今のガソリンエンジンにそのまま使えるため、クルマを乗り換える必要がありません。結果、廃車を減らし環境負荷を下げることにもつながります。

また、ガソリンエンジン部品を製造する企業にとっても、現在稼働している生産ラインを維持できるメリットがあります。

業界全体の共倒れを防ぎ雇用や技術を守る観点からも、マルチパスウェイは有効なアプローチです。

マルチパスウェイの欠点3選

マルチパスウェイは、以下3つの欠点も持っています。

  1. ユーザー視点の「正解」が分かりにくくなる
  2. ランニングコストの比較がしづらくなる
  3. メンテナンスが複雑になる

1. ユーザー視点の「正解」が分かりにくくなる

マルチパスウェイ戦略上では、ディーラーにはさまざまなカテゴリーのクルマが並びます。すると、ユーザーは「結局、どれを買えばいいの?」と迷いやすくなるのが欠点です。

実際、今では各カテゴリーごとの補助金や税制優遇が複雑化しています。この状況では、専門家でさえも将来のリセールバリューの予測が困難なのが現状です。

また、ガソリン車ではシンプルだった「メーカーごとの独自技術」の形が、EVではまったく異なります。結果、技術に詳しくない一般人が混乱する要因となっています。

詳しい説明はディーラーの役割とはいえ、ある程度の予備知識はユーザーには必要です。

2. ランニングコストの比較がしづらくなる

燃料の形態が多様化すると、ランニングコストの計算が複雑になります。ガソリン価格だけでなく、電気代や水素価格なども考慮する必要があるためです。

また2026年現在では実質廃止されていますが、将来的にはガソリンに「炭素税」が再導入される可能性があります。このように世界情勢を考慮すると、長期的な予測は一層難しくなるでしょう。

マルチパスウェイが広まった業界では、個人の環境に合わせたランニングコストの比較が必要です。

3. メンテナンスが複雑になる

自動車修理業者やメーカーなどの整備現場では、高電圧を扱うEVやHEVの知識と、従来の内燃機関の整備技術の両方が求められます。

また、HEVやPHEVは部品点数が多く、故障リスクや整備コストが増加する傾向にある点も、技術者の負担を増やしています。

結果として、技術者の負担増と人材不足が深刻化しているのが現状です。

帝国データバンクによると、2024年度に倒産した自動車整備を担う事業者は、過去最多の445にものぼっています。さらに追い打ちをかけるのが、整備士の高齢化です。

引用:テレビ愛知公式YouTubeチャンネル

業界では自動化による効率化も進んでいますが、専門知識を持つ人材はやはり欠かせません。マルチパスウェイ戦略における設備投資や人材投資の経営圧迫は、業界全体の課題です。

トヨタが進めるマルチパスウェイ戦略

ここからは、トヨタが提唱したマルチパスウェイ戦略について詳しく解説します。

「敵は炭素であり内燃機関(ICE)ではない」という信念

トヨタ会長の豊田章男氏は「敵は炭素であり内燃機関ではない」というメッセージを繰り返し発信しています。

日本自動車工業会は9日に記者会見を開催し、会長の豊田章男氏(トヨタ自動車社長)が欧州などによる内燃機関車を禁止する方針に対して「敵は炭素であり、内燃機関ではない」と反論した。

引用:日本経済新聞

日本の誇るエンジン技術を捨てることは、自動車産業が築いた強みを放棄することになります。それでは、日本の自動車メーカーは衰退の一途を辿るでしょう。

豊田会長のこの発言は、EV一辺倒の業界にとってまさに金言といえます。エンジンの排除ではなく「二酸化炭素の排出をゼロにする」のが主目的、というカーボンニュートラルの本質をうまく突いた理論です。

マルチパスウェイワークショップなどを通じて全方位で脱炭素を目指す

トヨタは2024年にマツダやスバルと共にワークショップを開き、次世代エンジンの開発を推進していることを明かしました。

このワークショップではトヨタの佐藤社長やスバルの大崎社長が、従来のエンジンは小型化や高効率化のほか、カーボンニュートラル燃料への対応が必要な点を述べています。

今の内燃機関が、そのままでいいわけではないんです。変わっていかないといけない。「内燃機関もソリューションだよね」と技術開発の手が止まってはいけない。

どんな未来をつくっていくのかということを、OEM(自動車メーカー)として責任を持ってお示しして、一緒に変えていくということだと思います。

引用:トヨタイムズ

また2026年後半には、北米市場でEVの3列シートSUV「ハイランダー」を投入する予定です。あくまでどちらか片方ではなく、HEV・EVをそれぞれ着実に拡充する方針を取っています。

今世界的に注目されているHEVの需要増にも応える柔軟な生産体制は、マルチパスウェイへの熱量の表れといえるでしょう。

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トヨタ以外のメーカーは?それぞれの脱炭素戦略を解説

トヨタ以外の国内自動車メーカーも、それぞれ着実に脱炭素戦略を推進しています。

ここでは以下5つのメーカーの現状を、詳しく解説します。

  • ホンダ
  • スズキ
  • 日産
  • マツダ
  • スバル

ホンダ:2040年完全EV化を掲げつつハイブリッドにも注力

ホンダは「2040年にグローバルでEV・FCEV販売比率100%」という目標を立てていましたが、足元のEV需要鈍化を受け、HEVへの投資を強化しました。

2026年からは新たなEVシリーズ「Honda 0 Series(ホンダ ゼロシリーズ)」を北米を皮切りに投入する予定で、軽量かつ高効率な次世代EVでの反転攻勢を狙っています。

Honda 0 αは、都市にも自然にも美しく調和し、あらゆるシーンで人びとに寄り添う存在を目指したSUVです。今年1月にCES 2025で発表したHonda 0 SALOON、Honda 0 SUVに続き、Honda 0シリーズの世界観への入り口となるゲートウェイモデルとして新たにラインアップに加わり、洗練されたデザインと、広い室内空間による高い快適性が特長となります。

引用:ホンダ公式サイト

一方で、2030年までのEV関連投資額を縮小し、当面は稼ぎ頭であるHEVのラインナップを拡充する方針です。つまり、収益を確保しつつEV開発を進める「二兎を追う」戦略を取った結果といえるでしょう。

スズキ:インド市場でバイオガスを推進

2026年現在、スズキは最大市場のインドにて、牛の排泄物などから作るバイオガスの普及に注力しています。

インドのような安定した電力供給が厳しい新興国市場では、EVとは異なるアプローチが必要です。そこでスズキは独自のプラントを開設し、地域の特性に合わせた脱炭素化を力強く推し進めている最中です。

スズキ株式会社(以下「スズキ」)とスズキ100%出資のインド子会社Suzuki R&D Center India Private Limited(以下「SRDI」)は、2025年12月6日に、グジャラート州バナスカンタ地域アグサラに建設したバイオガス・プラント「BANAS SUZUKI BIOGAS PLANT」の開所式を開催しました。

「BANAS SUZUKI BIOGAS PLANT」は、スズキとして初めてCNG車の燃料用バイオガス(CBG)を生産・販売するバイオガス・プラントです。

引用:スズキ公式サイト

新興国向けのEVに関しても、トヨタと連携した小型EVプラットフォームの開発を進めてはいます。ですが現状では、このようなバイオガス車やバイオエタノール車が当面の最適解となり続けると思われます。

日産:「e-POWER」を脱炭素戦略の核に

2026年現在の日産は、エンジンで発電しモーターで走る「e-POWER」を主力とし、電動化を進めています。

最新の第3世代e-POWERは、内燃機関として世界最高レベルの熱効率50%を実現しています。日産はこの第3世代エンジンを、2025年から北米や日本市場に順次投入している最中です。

日産はe-POWERでエンジンの役割を発電に特化させ、さらに独自のSTARCコンセプトによるリーン燃焼、廃熱回収技術により、熱効率50%を実現します。 これにより更なる燃費向上とCO2削減が可能となります。

引用:日産公式サイト

今後は全固体電池の実用化も2028年を目指しており、次世代技術との組み合わせで競争力を高める方針です。

マツダ:ロータリーエンジンによる多彩な燃料の利用

マツダは象徴であるロータリーエンジンを、発電機として活用する独自技術を実用化しました。

その第一号である「MX-30 Rotary-EV」は好評を博し、日本自動車殿堂カーテクノロジーオブザイヤーなど多くの賞を受賞しています。

マツダ株式会社(以下、マツダ)の、「MAZDA MX-30 Rotary-EV(エムエックス サーティ ロータリー イー ブイ)」および搭載された「e-SKYACTIV R-EV(イー スカイアクティブ アール イー ブイ)」の技術が、「2024~2025日本自動車殿堂 カーテクノロジーオブザイヤー」に選定されました。

引用:マツダ公式サイト

ロータリーエンジンは構造上、水素やバイオ燃料などのさまざまな燃料に対応しやすいのが特徴です。

マツダはトヨタやスバルとの協業でもこの強みを活かし、独自のマルチパスウェイ戦略を描いています。

スバル:トヨタの技術と水平対向エンジンで次世代ハイブリッドを展開

スバルは2024年末から、トヨタの技術と自社の水平対向エンジンを融合させた次世代ハイブリッドを展開しています。

この次世代ハイブリッドシステム「ストロングハイブリッド」は、航続距離を大幅に延ばすことで、広大な北米市場などのニーズにしっかりと応えました。

今後はトヨタと共同開発するEVラインナップに加え、独自資産である水平対向エンジンを残しながら電動化することで、スバルらしさと環境性能の両立を目指しています。

日本のマルチパスウェイの今後は?プロが考察・予想

日本のマルチパスウェイ戦略の今後について、プロの考察・予想を交えて解説します。

近年は日本のマルチパスウェイ戦略が再評価されている

近年、日本のマルチパスウェイ戦略は世界からも再評価されるようになりました。これはEVの使い勝手の悪さが壁となり、利益が見込めるHEVの評価が見直されているためです。

以下の表は、2025年のトヨタとレクサスのカテゴリー別販売台数と構成比です。表を見ると、いまだにガソリン車やディーゼル車、ハイブリッドの構成比が多くを占めていることが分かります。

HEV (ハイブリッド)4,433,50342.1%
ICE (ガソリン/ディーゼル)5,541,91352.6%
BEV (電気自動車)199,1371.9%
PHEV (プラグインHV)183,8451.7%
MHEV (マイルドHV)177,1521.7%
FCEV (燃料電池車)1,2570.01%
電動車合計4,994,89447.4%
総合計10,536,807100%
引用:トヨタ公式サイト

プロの視点から見ても、今後自動車メーカーは「ICEやハイブリッドを主軸としつつ、並行して未来の技術(全固体電池など)を確立、そしてEVの課題を解決しつつ多角的に展開する」という戦略を採ることが、より現実的な選択肢と言わざるを得ません。

これからは「EVかそれ以外か」という対立ではなく「用途に合わせて選ぶ」のが当たり前になっていく確率がもっとも高いでしょう。

新興国での日本車人気がさらにマルチパスウェイの追い風に

また南米や東南アジアなどの新興国での日本車人気が、この戦略の強力な追い風となっています。

2026年現在、米国は日本や韓国の自動車に高い関税をかけている一方、南米や南アジアは米国の圧力が限定的です。

日本と韓国の自動車メーカーは、関税と激化する国際競争の板挟みとなっています。こうした状況下、南米と南アジアは比較的明るい兆しを見せており、地域政策の支援と米国の貿易措置の影響が限定的であることから、緩やかな成長が見込まれています。(翻訳)

引用:S&Pグローバル

これら新興国では電気の安定供給が難しいため、EV一辺倒の戦略はインフラ面から見て困難です。そのため、既存のガソリンスタンドなどが使えるマルチパスウェイ戦略が速やかな削減につながります。

日本車が新興国で人気なのは、その国の生活環境に寄り添った「壊れづらく便利な移動手段」を提供し続けているからだといえるでしょう。

今後は内燃機関とEVの「いいとこどり」が主流になる

今後は、内燃機関(ICE)とEVの「いいとこどり」が主流になっていくと考えられます。具体例としてマツダのロータリーエンジンは、電気を作る発電機として進化し生まれ変わりました。

また日産のe-POWERも、エンジンは発電に専念しつつモーターが走行を担当することで、バッテリーの軽量化と快適な走行を実現しています。

加えて、ICEがガソリンではなく「水素」や「合成燃料」を燃やせば、エンジンそのものがCO2を出すことがありません。

結果、将来的には「街乗りはEV、遠出はエンジンとモーターのハイブリッド」という使い分けが定着し、日本の高度なエンジン技術は形を変えて世界中で必要とされ続ける可能性は十分にあります。

ただしその取り組みを成功させるには、自動車メーカーの努力だけでなく、国や行政、IT産業やエネルギー産業と深く連携していくことが重要です。

【まとめ】自動車業界の明るい未来はマルチパスウェイの先にある

マルチパスウェイ戦略は、世界中の多様なニーズに応えるための現実的で強力なアプローチです。現にマルチパスウェイを積極的に目指している、トヨタやスズキをはじめとする日本メーカーの取り組みは、着実に成果を上げつつあります

今後も技術の進化と各業界の連携が深まれば、自動車業界の未来はさらに明るいものとなるでしょう。トヨタを始めとした国内メーカーの動向は、要チェックです。

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