【2025年版】EV(電気自動車)トラック全車種を一覧で紹介|メリットや普及のための課題も解説
更新日: 2025/12/3投稿日: 2025/11/26
EV
「会社のトラックも、そろそろEVに入れ替えるべき?」
「燃料費高騰対策としてEVトラックが気になっているけど、実用性はどうなの?」
物流業界における環境規制の波は年々高まっており、EVトラックの導入を検討し始めている事業者様も多いのではないでしょうか。
しかし、航続距離や充電インフラ、コスト面での不安から、なかなか導入に踏み切れないのが実情です。
実は2025年11月現在、EVトラックのラインナップは少しずつ増えており、都市部配送を中心とした実用性は飛躍的に向上しています。導入コストこそ高いものの、長い目で見れば大きな経費削減効果を生む可能性を秘めているのです。
そこでこの記事では、現在販売されているEVトラックの全車種紹介からメリット・デメリット、今後の普及課題などを徹底解説します。
この記事を読めば、自社業務にEVトラックを導入すべきかが明確になります。ぜひ最後までご覧ください。
【2025年11月】EVの小型トラック一覧

2025年11月現在、日本国内で購入可能な小型EVトラックを以下の4車種紹介します。
- 三菱ふそう:eCanter
- 日野:デュトロZ EV
- HWE:ELEMO-M SPECII
- いすゞ:ELF EV
1. 三菱ふそう:eCanter

| 項目 | 内容 |
| 発売時期 | 2023年3月 |
| 価格(税込) | 1,370万500円〜 |
| 航続距離 | 最大324km(Lサイズモデル) |
三菱ふそうが展開する「eCanter」は、国内EVトラックのパイオニア的存在です。2023年に登場した新型モデルでは、ラインナップが大幅に拡充されました。
最大の特徴は、モーター周りを一体化した「eアクスル」の採用です。これにより、全体の小型化に成功しました。
結果として、国内向けだけで28車種もの多彩なバリエーションを実現しています。
バッテリーは用途に合わせてS・M・Lの3サイズ(41kWh、83kWh、124kWh)から選択可能です。Lバッテリーを搭載した7.5t車の場合、一充電走行距離は最大324km(WLTCモード時)に達し、都市間配送にも十分対応できます。
2. 日野:デュトロZ EV

| 項目 | 内容 |
| 発売時期 | 2022年6月 |
| 価格(税込) | 800万円台〜(非公表) |
| 航続距離 | 最大150km |
日野自動車の「デュトロZ EV」は、ドライバーの負担軽減にとことんこだわった、ウォークスルーバンタイプの小型EVトラックです。
ウォークスルーバンとは?
運転席から荷台へと車内から移動できる商用車のこと。車から降りずに荷分けや積み下ろしをスムーズに行える。
最大の強みは、何と言っても「超低床」構造です。小型トラックでは珍しい前輪駆動(FWD)を採用することで、荷台の床面地上高を約400mmという驚異的な低さに抑えました。
荷台の天井までは約1.8m弱あるため、ドライバーは屈まずに立ったまま作業が可能です。荷物の積み下ろし時の身体的負担を、劇的に軽減します。
一充電走行距離は150km(WLTCモード時)と控えめですが、ラストワンマイル配送には必要十分な性能です。車両総重量3.5t未満のため、AT普通免許で運転できるのも大きな魅力です。
3. HWE:ELEMO-M SPECII

| 項目 | 内容 |
| 発売時期 | 2021年11月 |
| 価格(税込) | 341万円~ |
| 航続距離 | 最大188km |
日本の商用EV専門ファブレスメーカー、HW ELECTROが展開する「ELEMO(エレモ)」シリーズの中型バンモデルです。
「ELEMO-M SPECII」は全長約4m、積載量1.25tクラスで、最大航続距離は188kmです。都市部から近郊への配送は、十分にカバーできるでしょう。
また特筆すべきは「移動式電源」としての機能です。AC100Vのコンセントを標準装備しており、災害時には「動く蓄電池」としてスマホや家電へ給電が可能です。
このことから、企業のBCP(事業継続計画)対策としても注目されています。
BCP(事業継続計画)対策とは?
災害やシステム障害などの緊急事態が起こった際、最小限の事業を継続させるための対策のこと。ELEMOのような蓄電池機能があるEVであれば、最低限の電力を供給して中核事業の継続が可能となる。
4. いすゞ:ELF EV

| 項目 | 内容 |
| 発売時期 | 2023年3月 |
| 価格(税込) | リース販売のみ |
| 航続距離 | 最大250km(110kWhモデル) |
いすゞの主力トラック「エルフ」のEVモデルです。2023年のフルモデルチェンジで、ディーゼル車と同時に登場しました。
「I-MACS」という開発手法により、ディーゼル車とプラットフォームを共有しています。これにより、EVでありながら多彩なバリエーション展開を可能にしました。
バッテリーは22kWhのパックを組み合わせるモジュール式を採用しており、44kWhから110kWhまで柔軟に対応できます。
また、ごみ収集車や高所作業車などの特装車に対応するため、バッテリーから動力を取り出す「電動PTO」も設定可能。あらゆる事業に対応する、新世代のEVトラックです。
【2025年11月】EVの大型トラック一覧
長距離輸送を担う大型トラックのEV化は技術的ハードルが高い分野ですが、ボルボが先行して日本市場へ参入しています。
ボルボ:FH Electric

| 項目 | 内容 |
| 発売時期 | 2023年4月 |
| 価格(税込) | リース契約が中心 |
| 航続距離 | 最大300km |
現状、日本で導入が進んでいる大型EVトラックの筆頭が、スウェーデンのボルボによる「FH Electric」です。
2025年モデルでは、歩行者や自転車を検知可能な衝突被害軽減ブレーキを搭載するなど、安全面にも余念がありません。
総重量44トンクラスの大型トラクタで、最大540kWhという超大容量バッテリーを搭載しています。また、キャブ内のUSBポートをType-Cに変更するなど、ドライバーの快適性向上にも配慮されています。
ボルボは日本市場への導入を積極的に進めており、航続距離を最大600kmまで延ばした「ロングレンジモデル」の導入も発表されました。ロングレンジモデルの予約開始は、2026年第二四半期となります。
EVトラックのメリット5選

2025年現在、EVトラックが注目され始めている理由は、以下の5つです。
- メンテナンス性が高い
- 騒音や振動が少なく疲れにくい
- ランニングコストが安い
- スムーズに加速・停止できる
- 補助金や税制優遇が適用できる
1. メンテナンス性が高い
EVトラックは構造がシンプルで、エンジンやトランスミッションなど、ディーゼル車特有の複雑な機械部品がありません。
よって、エンジンオイルやフィルター、点火プラグといった消耗品の交換が不要です。これにより、整備による車両のダウンタイム(稼働停止時間)が短縮され、稼働率が向上します。
また、回生ブレーキによって減速することで、ブレーキパッドの摩耗も大幅に低下。結果的に、ランニングコスト削減に大きく寄与しています。
2. 騒音や振動が少なく疲れにくい
EVトラックはモーター駆動のため、エンジン特有の騒音や振動がありません。これにより、ドライバーのストレスや疲労が劇的に軽減されます。
医薬品卸会社のアルフレッサが業務用EVドライバーに実施したアンケート調査では、ドライバーの約85%が「疲労感が低下した」、約80%が「運転後のストレスが軽減した」と回答しています。
また、早朝・深夜の住宅街配送でも、アイドリング音による騒音トラブルを心配する必要がない点も魅力的です。
3. ランニングコストが安い
EVトラックは、導入コストこそガソリン車より高額なものの、日々のエネルギーコストは安価です。
トラックに多用される軽油価格は、中東情勢などの影響を強く受けます。一方、電気代はオイルに比べ、相場が比較的安定しています。
また、多くの事業所が契約する高圧電力や、夜間の割安な電力プランを活用することで、電気代を劇的に抑えることが可能です。
軽油から電力へ、エネルギーの切り替えによりコストが6割以上削減された。
引用:環境省資料
ただし、EVのバッテリーは消耗品であり、将来的に交換が必要になります。バッテリーの交換・修理には、高額なコストが発生する可能性がある点は覚えておきましょう。
4. スムーズに加速・停止できる
モーターは踏み込んだ瞬間から、最大トルクで加速します。ガソリン車のようにエンジン回転数を上げてから加速する必要がないため、発進が非常にスムーズかつ強力です。
信号の多い都市部や、荷物を満載した状態での坂道発進などのストップ&ゴーが求められる配送業務において、この特性は大きな強みとなるでしょう。
また変速機がないため積荷への衝撃が少なく、荷崩れリスクも低減できる点は魅力的です。
5. 補助金や税制優遇が適用できる
EVトラックは導入のハードルを下げる目的から、国や自治体から手厚い支援を受けられます。
例えば、事業者が三菱ふそう「eCanter」を新車購入する際、受けられる補助金・税制優遇は以下のとおりです。
| 項目 | 金額 |
| LEVO補助金(政府) | 最大約845万円 |
| CEV補助金 | 各自治体により異なる |
| 自動車重量税 | 0円(免税) |
| 環境性能割 | 0円(非課税) |
| 自動車税(翌年度) | 概ね75%減税(最大積載量により異なる) |
また、東京都など独自の税制優遇を受けられる自治体であれば、さらに負担を軽減可能です。詳しくは「一般社団法人 次世代自動車振興センター」をご覧ください。
EVトラックがなかなか普及しない3つの理由【ガソリン車と比較】

メリットが多い一方、EVトラックはまだ普及を進める段階にあります。その理由は、以下の3つです。
- 車体価格(値段)が高め
- 航続距離が短め
- 充電時間が長い
1. 車体価格(値段)が高め
EVトラック最大のネックは、やはり初期費用の高さです。
例えばいすゞのエルフの場合、ディーゼル車とEVの価格は以下のようになります。
- ディーゼル車(2024年モデル):約652万円(税込)
- EV:約1,370万円(税込)
2倍以上の開きがあるのは、車両コストの大半を占めるバッテリー価格が高額なためです。
また、充電設備の設置工事費なども含めると、中小事業者にとっては投資回収のハードルが非常に高いのが現状です。
2. 航続距離が短め
EVトラックのバッテリー技術は進化していますが、それでもディーゼル車の航続距離には及びません。
例えば三菱ふそうのCanterで比較すると、航続距離は以下のとおりです。
- Canter(ディーゼル車):700km以上
- eCanter(EV):最大324km
最長距離を誇るボルボ「FH Electric」でも最大600kmであり、長距離運送用途には課題が残ります。
また、エアコン使用などで航続距離が変動する点も、運行管理を難しくする要因です。
3. 充電時間が長い
EVトラックの充電時間は、短く見積もっても数時間を要します。ディーゼル車であれば数分で給油できることを踏まえると、大きなデメリットと言わざるを得ません。
たとえ急速充電器を利用しても、大容量バッテリーを搭載するEVトラックは、満充電までには時間がかかります。
現状では途中充電が必要な場合、ドライバーは充電中の長時間待機が必要です。これにより、人件費の増大につながる懸念もあります。
EVトラックが今後普及するための3つの課題

EVトラックが今後普及するには、以下3つの課題をクリアする必要があります。
- 航続距離の改善
- 充電設備の増設や出力向上
- 車両価格を下げる
1. 航続距離の改善
EVトラックが普及するには、何よりも航続距離の改善が不可欠です。
現在EVバッテリーに使われているリチウムイオン電池では、ディーゼル車並みの航続距離を確保しようとすると、バッテリーの重量と容積が大きくなりすぎます。
巨大なバッテリーを積むことになると、トラックに最も重要な「積載量」の圧迫につながってしまうでしょう。
この課題を解決するため、より軽量でエネルギー密度が高い次世代電池の研究開発が、世界中で進められています。
2. 充電設備の増設や出力向上
国内の充電設備は、まだまだ足りていないのが現状です。とくに、トラックが通ることの多い山間部や物流地点などは、空白地帯が続いています。
また、充電設備の出力についても課題が残ります。EVトラックの大容量バッテリーを短時間で充電するには、従来の50kW程度の急速充電器では不十分です。
この点を踏まえ、経済産業省は2030年までに充電インフラを30万口に増やす指針を発表しました。
声明の中で、急速充電器の平均出力を現在の約40kWから80kWへ倍増させ、さらなる高出力充電器の設置を標準とする方針を打ち出しています。
急速充電は、高速では90kW以上で150kWも設置。高速以外でも50kW以上を目安、平均出力を倍増(40kW→80kW)
引用:経済産業省資料
今後の高出力インフラの整備は、EVトラックの稼働率を上げるうえで極めて重要です。
3. 車両価格を下げる
EV普及の最大のハードルは、高額な車両価格です。とくに車体価格の3~4割を占めるバッテリー価格を、いかに低減するかは重要な課題です。
リチウムイオン電池の主材料であるレアメタルは、価格高騰や地政学的な供給リスクを常に抱えています。
車体価格を大きく低減するには、これらレアメタルの使用量が少ない、あるいはまったく使用しない次世代電池の開発が急がれます。
EVトラックに関するよくある質問

EVトラックに関するよくある質問をまとめました。
2025年11月現在は販売されていませんが、2026年春に参入予定です。
BYDジャパンは、日本専用設計の小型EVトラック「T35」を発表しました。普通免許で運転可能かつ航続距離250kmを確保し、価格は800万円前後を予定しています。
2025年11月現在、EVトラックの中古購入は非常に困難です。
理由としては市場自体が黎明期であり、中古車として出回る個体がほとんどない点が挙げられます。
ただし、既存のトラックをEVに改造する「コンバートEV」などのサービスが登場しており、新車の3分の1程度のコストで導入できる選択肢として注目されています。
大手物流業者を中心に導入が進んでいます。ただし普及はまだ限定的であり、特定の近距離配送用途が中心です。
現在、EVトラックを最も積極的に導入しているのは、ヤマト運輸などの大手物流事業者です。三菱ふそう「eCanter」やいすゞ「ELF EV」などを数百台規模で先行導入し、実運用でのデータ収集を進めています。
その利便性が認められれば、今後ますますEVトラックを導入する事業者は増えていくものと見られています。
【まとめ】EVトラックは今後の普及に期待が高まる

EVトラックは、燃料費高騰や環境規制といった、現在の物流業界を取り巻く課題を解決する可能性を秘めています。
現状では、初期コストや航続距離に大きな課題を持っているのも事実です。ですが、自動車メーカー各社や政府の働きにより、これらの問題は解決されていくものとみられています。
今後の技術革新次第では劇的な普及も見込めるため、業界の動向を常にチェックしておきましょう。
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